会計システムは営業活動の結果を表す財務諸表を作成したり、企業の収支改善に役立てる管理資料を作る機能などがあり、企業にとっては欠かせないシステムです。
今回は様々な会計システムがある中で、自社にあったシステムを選ぶ際に気にしていただきたいポイントについて書いていきたいと思います。
会計システムの役割とは
そもそも会計システムとは何をするシステムなのでしょうか。
会計の業務領域は大きく財務会計と管理会計に分けられます。
財務会計は、日常的な企業活動で発生する取引(売上、仕入、入金、支払、など)を記録し、営業の成果を決算数値にして、外部の関係者に情報提供することが目的です。
一方、管理会計は経営者の意思決定や部門の業績評価に役立てるために必要となる会計情報をまとめあげて、社内に向けて提供することを目的にしています。
会計を担当する経理部は財務会計と管理会計の業務を遂行するため、営業予算や販売実績、経費の情報などを集め、資料を作成していきますが、それらの業務を効率よく行うために導入されるシステムが会計システムです。
会計システムを変える主な理由
企業が会計システムを変えようとする理由は様々ありますが、主には次の3点が引き金になるケースが多いように思います。
①システムやハードウェアの保守終了
利用しているシステムやサーバなどのハードウェアには保守期間が定められている場合があり、その期間を過ぎると、不具合対応やベンダーへの問い合わせができなくなるなど、システムを使う上でのリスクが高まりますので、入れ替えを検討するきっかけとなります。
②業務内容の変化
企業が成長し、事業を拡大したために管理しなければならない指標が増えたり、データ量が増大して会計システムの性能が追いつかなくなった時も、自社の状況に合ったシステムを考えるタイミングとなります。
③法制度への対応
消費税率や会計基準など、法律で定められたルールに変更が生じることが判明した時、従来の会計システムでは機能的に不足する場合は、対応可能な会計システムの導入を準備しなければいけなくなります。
会計システム選定で注意したい3つのポイント
上記のような理由により、企業が会計システムを導入することにした場合、法制度に対応しているなどの当然な部分を除いて、何を基準に選べばよいのでしょうか。
選定の要素には機能面や費用面など、様々な視点がありますが、その中から敢えてお伝えしますのは、以下の3つです。
①管理会計機能の適合性
②他システムと連携の柔軟性
③カスタマーサポートの充実度
システムを選ぶ時には現場の使い勝手や維持コスト面も評価ポイントにはなりますが、まず第一は、会計領域の業務で自社が実現したいことをできるか、ということが大切だと思います。
①管理会計機能の適合性
これは自社が必要とする社内向けの資料を充分に作成できるかという点です。
企業は様々な業種に分かれ、更に同業種であっても個々に経営方針や目標が異なっていますので、企業によって見たい分析資料も異なってくることになります。
ある企業では部門別・商品別の予算と販売実績が見ることができればよいというところもあれば、地域別や取引先の売上規模別まで見たいというところもあります。
それら個別の要望に応えられる管理会計機能が備わっていないことが、導入時に発覚した場合、後から機能を付け足すことは困難ですので、選定時に確認しておくのは重要だと思います。
なお、今まで出来ていることだけではなく、従来の会計システムでは機能が足りないがために出来なかった分析などもあれば、対応可能かを併せて確認することも必要です。
②他システムと連携の柔軟性
こちらは財務会計と管理会計の双方に関係します。
膨大な営業上の取引を会計システムに一つ一つ手入力していくわけにはいきませんので、他の業務システムからデータを取込み、記録することが必要になります。
例えば販売管理システムからは売上と仕入のデータ、経費精算システムからは交通費などのデータ、人事給与システムからは労務費のデータなどを出力し、会計システムへ取り込むことになりますが、それぞれのシステムから出力するデータの形で受け取ることができるか、あらかじめ確認しておくのがよいと思います。
もし受け取れないのであれば、出力されるデータの形式や並び順を変えればできるのか、取り込める形に変換するツールや方法があるのかも合わせて聞いておくのがポイントです。
③カスタマーサポートの充実度
3点目は会計システムに対するベンダーのサポートについてです。
システムの機能に直接は関わりませんが、企業にとって重要な役割を担う会計システムが安定して稼動するためにも、選定時には確認をしておきたいポイントだと考えています。
会計システムの目的の一つとして、「営業の成果を決算数値にし、外部の関係者に情報提供すること」と書きましたが、これは遅延や間違いが許されません。
厳密には後から修正することもありえますが、失敗できない業務であると捉えてよいと思います。
経理の現場では失敗しないように日々気をつけはするものの、どうしてもシステム起因でトラブルが発生する時もあります。
私は以前、とある会計システムベンダーに勤務していましたが、夜の10時頃にお客様から「決算書が印刷できない。明朝までに出さないと経理全員がクビになります。。。」と言われ、大慌てで対応し、朝方に復旧したという経験があります。
これは極端な例ではありますが、システムはいつ何が起きるかわかりません。
しかし、トラブルを完全に予防するのは困難ですので、発生した時にベンダーがどれほど適切な対応をしてくれるかが重要になります。
トラブル時にどのような対応をしてくれるのか、決算処理の時期は手厚くサポートをしてくれるかなど、確認をしておく必要があると思います。
最良な会計システムを選択するために
会計システムは頻繁に入れ替えるシステムではありませんが、企業の決算や業績管理の業務を支える、とても重要なシステムです。
新しくすると決めた際には、変える目的は何か、その目的を叶えるにはどのようなシステムであるべきか、候補の中から選ぶために重視する要素は何かなどをよく考え、整理をした上で臨んでいただければと思います。
上記のポイントが少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
まとめ
・会計システムの関係する業務領域
☑ 外部向けの財務報告を作成する。
☑ 内部向けの管理資料を作成する。
・会計システムを変える理由
☑ システムやハードウェアの保守終了に伴うシステム停止リスクを回避するため。
☑ 業務内容の変化によるシステム性能の不足を改善するため。
☑ 消費税率や会計基準などの法制度が変化する時に対応するため。
・会計システム選定のポイント
☑ 管理会計機能が自社にマッチしているかを確認する。
☑ 他の業務システムとデータ連携ができるかを確認する。
☑ システムトラブル時のサポート体制を確認する。