新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各地で活動の自粛が行われています。企業においても、職場における感染拡大防止のため、時差通勤や自宅等で業務を行うテレワークが強く推奨されました。
しかし、LINEと厚生労働省が実施した「新型コロナウイルス対策のための全国調査」によると、「仕事はテレワークにしている」と回答した人は5.6%と、テレワークの実現が厳しい様子も伺えます。もちろん、業務の特性上テレワークが困難な職業の方も多いかと思いますが、テレワークを実施できなかった理由には、テレワークの制度が整備されていないまたは、テレワークのためのICT環境が整備されていないという背景もあるようです。
このような状況を打破するには、どのような対応が企業に求められるでしょうか。
これから、より一層テレワークの需要が上がっていくと思われる中、社内のシステムを見直すタイミングにある企業ではどのような点に気を付けると良いか、考えてみたいと思います。
そのシステム、自宅でも利用できますか?
今回の新型コロナウイルス対策として、即座にテレワークに切り替えた企業がニュースになりました。しかし、ほとんどの企業では業務を完全にテレワークに切り替えることは容易ではなかったかと思います。なぜなら、全社員が自宅で業務することを前提としてシステムを導入している会社はそう多くはないからです。
いざ始めたはいいものの、テレワークのメリットデメリットに突き当たった方も多いのではないでしょうか。いろいろな意見があるかとは思いますが、テレワークのメリット・デメリットには、以下のような点があげられるかと思います。
▼テレワークのメリット
①場所や時間の制限なく作業できる
②コスト削減ができる
③事業継続性を確保できる
※テレワークは、情報通信機器等を活用して、時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働くことができる形態を指します。
社員が働く場所が固定ではなくなるため、企業はオフィスの維持に必要な固定費を削減することが可能です。また、自然災害や家庭の事情等で、通勤が困難な場合でも、自宅等での作業が可能なため、事業を継続することができます。
▼テレワークのデメリット
①情報漏洩のリスクがある
②コミュニケーションロスが生じやすい
③勤怠管理や評価が難しい
※会社への通勤が不要になるといった反面、社外で業務を行う場合にはセキュリティ面のリスクも考えなければなりません。また、社内で同じスペースにいる場合とは違い、テレワークでは社員の業務状況を確認することが難しくなります。結果としてコミュニケーションが減り、業務が滞ったり、評価の難しさを感じることもあるようです。
上記の内、テレワークに必要なシステムの条件として、重点を置きたいのはデメリットの方です。
情報漏洩は、企業としては必ず避けなければならないことですので、セキュリティという観点は外せません。そして、企業として円滑に業務を行うために、テレワークでも職場と同じようにコミュニケーションをとり、社員の働きが把握できるような環境づくりが必要となります。
次項では、セキュリティと環境というポイントから、テレワークに必要なシステムの条件をあげていきます。
テレワークに適したシステムの条件
テレワークを実施するうえで、最も懸念されるのは情報漏洩のリスクです。
普段、職場で業務を行う場合とテレワークとでは、以下のような情報セキュリティ上の違いがあります。
▼情報セキュリティの違い
・情報のやり取りに、外部ネットワークを通す必要がある
・情報セキュリティに関する監視の目が届きづらい
・従業員以外の部外者が立ち居る可能性がある場所で、情報を扱っている
場所の制限なく業務ができるのがテレワークのメリットですが、外部から社内ネットワークに接続する場合には、十分な情報セキュリティ対策がネットワークに備わっておらず、通信の傍受やマルウェア感染が発生するリスクが考えられます。全社員にモバイルルータが用意できれば良いのでしょうが、緊急時に備え全社員分用意しておくことは難易度が高く、かといって個人毎の接続方法やアクセス結果まですべてチェックするには、情報システム担当の負担が大きすぎます。
また、自宅で業務を行う場合には、機密事項を扱っている背後を家族が通るかもしれません。本来であれば、それは望ましい環境ではありません。
セキュリティ対策には、何をしたら絶対というものはありませんが、対応策にもメリット・デメリットが存在するため、自社のルールとして、何を重視し対策を組むかがポイントとなります。テレワークを実施する上で、情報システム担当の負荷を上げずセキュリティレベルを維持するには、以下のような点を考慮しておくと良いかと思います。
▼システムの条件
①クラウドサービスの提供があること
②暗号化がされていること
③強固なユーザー認証、アクセス制御がかけられること
オンプレミスかクラウドか、システム選定の際にはよく出てくる条件ですが、テレワークを利用する前提であれば、クラウドサービスの提供があるシステムがお勧めです。クラウドサービスを利用するメリットは、端末上にデータを残さず仕事ができる点とクラウド事業者による最新のデータ管理が施されているという点です。もちろん、インターネットを介す以上リスクが無いわけではありません。しかし、個別にVPN接続等の設定を行いアナウンスする手間が省けるだけでも、情報システム担当としてはメリットがあるのではないでしょうか。
暗号化やユーザー認証、アクセス制御は、インターネットを介すため必須条件であると考えます。通信データが第三者に盗聴されても内容が読めない様、また不正アクセスによる情報漏洩リスクを減らすため、この2点はできるだけ強固なものを選ぶ必要があります。
テレワーク運用を補助する環境づくり
テレワークと、通勤時の違いは、働く環境です。特に大きなポイントとしては、社員の働く姿が視界に入っているという点です。同じ部署の社員はたいてい同じ室内にデスクがあり、出退勤の状況やタスクの進捗も、その場で確認することが多いのではないかと思います。
ところが、テレワークの場合には状況が見えません。いちいち状況を確認するのも煩わしく遠慮してしまい、結果としてコミュニケーションロスが生じたり、勤怠管理や評価がし辛かったりということになるのだと思います。
つまりは、相手の状況が把握できない環境であるがゆえに、デメリットが発生していると考えられます。このような環境面を補っていくためには、以下のような条件を考慮する必要があります。
▼環境面を補助する条件
①システム利用ユーザーの状況(ステータス)が把握できること
②普段職場で交わしているような会話が、システム上で行えること
③グループやチーム内で交わされた会話を、把握・確認できること
普段、プライベートではSNSやチャットツールを利用している方が多いかと思いますが、業務でもすでに取り入れているという企業はそこまで多くはない印象です。しかし、使ってみるとなかなか便利なもので、ログイン状態やステータスの表示等、相手の状態が一目でわかるため、すぐに連絡を取りたい時には重宝しています。メールよりも断然気軽に情報発信ができますし、スピードや検索機能ではSNSが圧倒的です。
簡単に連絡がとれ、状況や情報が把握・共有できるのであれば、評価や勤怠管理もさほど難しくは無いように思います。
一点注意事項を上げるとすれば、ツールはあくまでもツールでしかなく、利用者が活用しなければ意味が無いという点です。
SNSは便利なツールですが、コミュニケーションを取ろうと自分の状態やコメントを発信しなければ、相手もそれを確認できません。
テレワーク時のデメリットの解消のためにも、普段から使い慣れておくというのも1つの対策になりそうです。
快適なテレワークのためのポイント
テレワークを実際にはじめて見ると、いろいろな課題が出てきます。テレワークのメリット・デメリットとしてあげていたことはもちろんですが、お客様との打合せや電話対応、郵便物や契約書等の物理的な物のやり取り等もそうです。事前に機材やルールをある程度準備していないと、なかなか活用できるものではないため、予行練習のように、普段からある程度ツールに使い慣れておく必要があります。
また、制度面でも考えるべきことはあります。例えば、派遣社員の待遇です。派遣社員は、規程上テレワークが許可されず、出社しなければならなかったとか、契約が終了したという話もあったようです。外部に業務を委託している場合は、そのようなケースの対応も考えておく必要があります。システム外のことでテレワークの実施を妨げられないよう、システムを活用しやすい環境づくりも大切です。
新型コロナウイルス対策をきっかけに、いつでもテレワークが始められる仕組みづくりを始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
・そのシステム、自宅でも利用できますか?
☑テレワークを実施できなかった企業のほとんどは、「必要なITシステムが整っていない」という状況がある。
☑テレワークを実施するためには、テレワークのデメリットである、「情報漏洩のリスク」「コミュニケーションロス」「勤怠管理や評価の難しさ」が補えるシステムが必要である。
・テレワークに適したシステムの条件
☑クラウドサービスの提供があること
☑暗号化がされていること
☑強固なユーザー認証、アクセス制御がかけられること
・テレワーク運用を補助する環境づくり
☑システム利用ユーザーの状況(ステータス)が把握できること
☑普段職場で交わしているような会話が、システム上で行えること
☑グループやチーム内で交わされた会話を、把握・確認できること
・快適なテレワークのためのポイント
☑事前にテレワークのルールを定め、必要なツールを準備しておく必要がある
☑テレワークで利用するツールは普段から使い慣れていたほうが良い