今回は、会計システム導入と業務改善について考えてみたいと思います。
システムを変更しようとする際に必ずと言っていいほど話題になるのが業務改善です。システムリプレイスを単なる現行システムの置き換え(費用)と考えるのではなく、新しいことを実現・達成する機会(投資)と考えるのであれば、システム導入の際に業務改善を実行しようと考えるのは当然です。
では、その業務改善の方向性として、どのようなことが考えられるのでしょうか。
今回は、会計システムの導入、その際の経理業務の改善にフォーカスをあててみたいと思います。
改善の方向性~早く!慎重に!安く!~
経理業務における改善とは?
経理業務に対して、経営者の思いとしてはどのようなことが考えられるでしょうか。経営者になったつもりで考えてみたいと思います。
①早く!:一日でも早く決算数値が見たい!
決算数値を早く見たいと経営者なら思うはずです。
言うまでもなく財務諸表は経営者の成績表です。成績が出たら一日も早く見たいと思うのは当然のことです。経理としては、一日も早く成績表が出せるように業務を改善すべきです。
システム導入は、「決算早期化」を促すようなものでなくてはなりません。
②正しく!:早く、正しい決算数値が欲しい!
早くても、間違いだらけの成績表など誰も要りません。信頼できる成績表でなければ、その成績を見て今後どうするかが判断できません。
このことから、早いだけでなく、正確な財務諸表の作成が経理には求められます。これは業務を標準化して品質を向上させることにつながります。
システム導入は、「業務標準化」を後押しするようなものでなくてはなりません。
③安く!…コストは最低限に留めたい!
いくら早く、正確な財務諸表が作成されたとしても、そのための費用が膨大になってしまっては意味がありません。身の丈に合わないシステムを入れたり、安易に人を増員したり、そんなことを考える経営者はまずいないと思います。
早く、正確な財務諸表を”安く作成する”ことが経理には必要です。
この”安く”というのは、例えば、残業や休日出勤等が発生しない業務体制のことを言います。
このようにシステムリプレイスを行う際には、
目的(①早く・②正しく・③安く)を予め明確にして、
業務改善に臨む必要があります。
失敗しない業務改善のために
それでは、システムリプレイスで失敗しないためには、どのような心構えないし留意点が必要になるのか考えます。
Critical Success Factor①
「目的」を持つ:何のために改善するのか明確にする
まず、目的を明確にする必要があります。
例えば、決算を早めたいのであれば、無駄な作業を削除しなければなりません。
目的を明確にするからこそ、そのためのアクションも具体化されます。
Critical Success Factor②
「段階」を追う:スケジュール感を持って段階を追って実現する
次に、段階を追って目標を達成するようにすべきです。
”二兎を追うものは一兎をも得ず”という諺もありますが、複数の目標を達成しようとして、結局一つも達成できない(現行のまま何も変わらない)という事例を目にします。結局は、システム導入が単なる現行の乗せ換えで終わってしまうケースです。
例えば、まず決算を早め、次にコスト低減を行うといった段階的なアプローチがシステムリプレイスの際の業務改善には求められます。
Critical Success Factor③
「第三者的立場」に立つ:外部者の意見を利用する
最後に、外部意見を利用する姿勢も大事です。
経理部だけで改善をしようとすると、昔からの習慣やしがらみの中で何も変わらないことがよく起こります。
例えば、利用してもいないのに、「昔からある帳票だから」との理由だけで、新しいシステムでも全く同じ帳票が出るように要求したりします。
このような事態に陥らないためにも、外部のコンサルや他部署の人間をシステム導入に関与させて、改善を促すように仕向けるべきだと考えます。
会計システム導入を契機とした業務改善事例
ここで、システム導入を契機とした業務改善の事例を紹介します。
ここで紹介する会社様は、ライセンスの保守期限が迫り、会計システムをリプレイスすべきか、それとも契約を更新して使い続けるべきかを悩んでいました。
そこで、そもそも会計システムの目的は何か、リプレイスするなら何を変えるべきか、システム導入の前にその目的を明確にし、導入のためのアクションプランを策定することにしました。
その結果、業務やシステムの無駄を省いた後、業務品質の向上を目指して標準化を図り、コスト低減を行うために、会計システムを導入しようとの結論に至りました。
Stage①:目的の明確化
システムを導入する目的を明確にし、短期導入のためのアクションプランを策定
Stage②:決算早期化
システム導入と並行して、業務改善だけでどこまで決算を短くできるかに挑戦
Stage③:業務の標準化
標準化対象業務を抽出するとともに、経理要員のスキルアップを実施
Stage④:コストの低減化
活動基準原価計算の考え方を利用し、付加価値の無い業務を徹底的に排除
上記①から④までを数年かけて達成した事例です。
この会社様では、上記の改善を行った結果、翌月内開示の決算体制が構築されるとともに、マニュアル等を整備して業務品質の向上に努め、無駄な作業を無くしたことから、年間3千万円近くのコスト削減に成功しています。
システムリプレイスは絶好のチャンス!
業務改善は、やる気さえあればいつでも実行できます。
しかしながら、多くの企業ではやる気があっても実行できていないのが現状です。
業務改善にはきっかけが必要です。業務改善は、何らかの外圧がないと大胆な改善は実行できないものです。法改正や景気低迷、組織再編など、外からのプレッシャーが無いと中々実行できません。
その中で、システムリプレイスは、業務改善の絶好のチャンスです。
システムリプレイスの機会が訪れれば、それを”会社を変えるチャンス”ととらえ、様々な改革や改善に挑戦してみては如何でしょうか。
まとめ
改善の方向性~早く!慎重に!安く!~
①早く!:一日でも早く決算数値が見たい!
②正しく!:早く、正しい決算数値が欲しい!
③安く!:コストは最低限に留めたい!
失敗しない業務改善のために
☑「目的」を持つ:何のために改善するのか明確にする
☑「段階」を追う:スケジュール感を持って段階を追って実現する
☑「第三者的立場」に立つ:外部者の意見を利用する
システム導入を契機とした業務改善事例
アプローチ(例):目的の明確化⇒決算早期化⇒業務の標準化⇒コストの低減化
期待成果(例):翌月内開示、業務品質の向上(マニュアル整備)、コスト削減(3千万円)
システムリプレイスは絶好のチャンス!