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これだけはおさえておきたい~連結会計実務に役立つ基礎知識

2019年10月10日

 

連結会計は、親会社や子会社といった複数の会社で構成されている企業グループ全体を一つの会社とみなして、親会社が連結財務諸表を作成するための会計です。
連結会計は、退職給付会計や税効果会計等とともに、難解な会計実務の一つと言われています。
その主な理由としては、連結財務諸表を作成する際、いろんな種類の連結特有の仕訳が登場し、一見してどんな目的で各仕訳を行う必要があるのかわかりにくいことが挙げられます。
しかし、連結会計の必要性やなぜその仕訳を行う必要があるのかといった基本的な考え方を理解してしまえば、それ程難しくはありません。
今回は、連結会計のおさえておきたい基本的な内容をわかりやすくお伝えしたいと思います。

 


連結会計とは

まず初めに連結会計とは何かについてお伝えします。
連結会計は、親会社や子会社といった二つ以上の会社からなる企業グループを一つの会社とみなして、親会社が連結財務諸表を作成するために行う会計です。
日本では、1964年から1965年にかけて親会社が子会社などを利用した粉飾決算が相次いで明るみに出たことで、企業グループの正確な財務報告のために連結財務諸表制度の必要性が徐々に認識されるようになったため、1977年4月1日以降開始の事業年度から連結財務諸表の作成が義務化されました。
しかし、当時はまだ個別財務諸表が主役で、連結財務諸表は脇役という位置づけでした。
やがて、日本の証券取引所もグローバル化し、外国人投資家が増えたことなどから、本格的な連結会計の導入に対する要求が高まり、1999年4月1日以降開始の事業年度より、従来の個別財務諸表を中心とした開示制度から連結財務諸表を中心とする開示制度に移行されました。
現在、連結財務諸表の作成が必要な企業は、上場企業並びに一部の非上場企業(会社法上の大会社(資本金が5億円以上、もしくは負債が200億円以上の会社)等)です。
なお、連結財務諸表には、企業グループの財政状態を表す「連結貸借対照表」、経営成績を表す「連結損益計算書」等があります。

 

連結会計の目的

次になぜ連結財務諸表が必要となるのか、連結会計の主な目的をお話しします。
その目的は2つあり、以下のとおりです。
(1)利益操作の防止
上記の連結会計導入の背景からもわかるように、親会社の個別財務諸表が主役だった時代には、子会社を利用して親会社で不当に多額の利益を計上するケースが多く発生していました。
連結財務諸表を作成する際には、親会社が子会社を利用して多額の利益を計上しても、子会社がグループ外部に棚卸資産の販売・固定資産の売却等を行わない限り、親会社が計上した利益(未実現利益)は連結会計上消去しなければなりません。
つまり、連結財務諸表には親会社による子会社を利用した利益操作を防止する役割があります。
(2)経営状況の正確な把握
近年持株会社化する企業が増加していますが、持株会社(親会社)の個別財務諸表だけをみても、その企業グループがどのような事業を行っているのか、その企業グループとして業績がどのような状況なのか
正確に把握することが出来ません。
このような場合などに、企業グループとしての経営状況を正確に把握するうえで連結財務諸表が役立ちます。

 

連結財務諸表の作成手順

次に連結財務諸表の作成手順を見ていきましょう。一般的には以下3つのプロセスを経て作成します。
(1)連結範囲の決定
連結財務諸表を作成するうえで、どの会社を連結財務諸表の範囲に含めるか検討する必要があります。
原則として、親会社はすべての子会社を連結の範囲に含めなければなりません。業績が良い子会社だけを連結対象とし、業績が悪い子会社を連結対象から外すといった恣意性を排除するためです。
しかしながら、規模が小さく、質的な観点からも重要性が乏しいなどといった場合には、連結の範囲に含めないことができます。このような会社を「非連結子会社」といいます。
連結対象となる子会社の判定は、議決権の所有割合が過半数かどうかだけではなく、意思決定機関を支配しているかどうかを実質的に判断して行います。この判断基準は、「支配力基準」と呼ばれています。
また、子会社のように意思決定機関を支配しているわけではなくても、議決権の20%以上を所有している会社や財務・営業・事業の方針決定に重要な影響を与えることができる会社であれば、「関連会社」とみなされます。
非連結子会社や関連会社に対する投資勘定については、原則として「持分法」を適用しなければなりません。
持分法は、連結子会社とは異なり下記(2)のように持分法適用会社の個別財務諸表の単純合算は行わず、持分法適用会社の損益のうち、投資会社(親会社)の持分相当額だけを連結財務諸表に反映させる会計処理です。
連結子会社については、連結財務諸表を作成する際、下記(2)個別財務諸表の単純合算を行いますが、非連結子会社及び関連会社については、個別財務諸表の単純合算は行わず、「持分法」という会計処理をします。
(2)個別財務諸表の単純合算
親会社及び連結子会社の個別財務諸表を合算
実務では親会社が準備した連結パッケージというツールを使って、子会社の個別財務諸表を収集するケースが多いかと思います。
子会社の経理部門が小規模である場合などは、提供される決算情報の信頼性があまり高くないケースも想定されます。そのような場合は、前年度の数値との比較などを行い、決算情報の信頼性を十分検証したうえで単純合算を行う必要があります。
単純合算を行ううえでは、海外に連結子会社がある場合、海外子会社の財務諸表は通常外国通貨で作成されていますので、適切な為替レートを使って円に換算したうえで合算しなければなりません。
(3)連結修正仕訳の作成
上記(2)が終わった後、連結修正仕訳を作成します。
連結修正仕訳とは、連結財務諸表を作成するうえで、企業グループの財政状態や経営成績などを連結上あるべき金額に調整するために必要な仕訳です。
主なものとしては、「投資と資本の相殺消去」、「当期純損益の按分」、「のれんの償却」、「内部取引の相殺消去」、「貸倒引当金の調整」、「未実現損益の消去」などがあります。
(2)と(3)を集計し、連結貸借対照表、連結損益計算書等の連結財務諸表を作成します。

 

連結会計の主な論点

続いて上記の各連結修正仕訳について説明します。
同じ企業グループ内の会社間の取引は、一つの組織内で行われた取引とみなし、各社の個別財務諸表で計上した資産・負債・純資産・損益については、連結決算時に相殺消去するという発想で各仕訳を見ていくと理解しやすいと思います。
■投資と資本の相殺消去
親会社の子会社に対する投資勘定とこれに対応する子会社の資本勘定を相殺消去するための仕訳です。
この相殺消去にあたり生じた差額は「のれん」(貸方残高の場合は「負ののれん」)として、連結貸借対照表で資産計上します。
■当期純損益の按分
子会社の当期純損益のうち、親会社に帰属しない部分を親会社以外の株主に「非支配株主持分」勘定(連結貸借対照表の純資産)として振り替えるための仕訳です。
100%保有していない場合にこの仕訳が必要となります。
例えば、親会社が株式の70%を保有している子会社が当期100の利益を計上した場合、100のうち30について、「非支配株主損益」(連結損益計算書)を計上することで、連結上の利益剰余金が減少しますが、その分「非支配株主持分」が増加します。
■のれんの償却
上記の投資と資本の相殺消去を行う際に生じた「のれん」を発生後20年以内に定額法その他合理的な方法により規則的に償却する仕訳です。
■内部取引の相殺消去
親会社・子会社間、もしくは子会社間の損益取引や債権債務残高を消去するための仕訳です。内部取引の相殺消去を行うことによって、連結財務諸表にグループ外部に対する損益や債権債務だけが計上できます。
■貸倒引当金の調整
上記「内部取引の相殺消去」において、債権・債務を消去した際、債権を保有していた側で貸倒引当金を計上していた場合、債権が消去されたにもかかわらず貸倒引当金だけが残ってしまいます。
そこで、その貸倒引当金を取り消す仕訳を行う必要があります。
■未実現損益の消去
グループ内の会社間で棚卸資産や固定資産を売買することで発生した損益を消去する仕訳です。グループ外部への売却等によって実現するまでは未実現損益として残っているので、この未実現損益を消去します。

 

おわりに

人手不足等により、近年連結決算業務をアウトソーシングする会社が増えてきました。しかし、アウトソーシングしたとしても、自社内で連結決算を理解している人材の確保は不可欠です。
このブログを連結会計の理解に役立てていただきたいと思います。

 

 

まとめ

■連結会計とは
・連結会計は、親会社や子会社といった二つ以上の会社からなる企業グループを一つの組織とみなして、親会社が連結財務諸表を作成するために行う会計である。
・連結財務諸表の作成が必要な企業は、上場企業並びに一部の非上場企業(会社法上の大会社(資本金が5億円以上、もしくは負債が200億円以上の会社)等)である。
■連結会計の目的
連結会計の主な目的は、親会社による子会社を利用した利益操作の防止、企業グループとしての経営実態の正確な把握等である。
■連結財務諸表の作成手順
連結財務諸表の作成は、(1)連結範囲の決定、(2)個別財務諸表の単純合算、(3)連結修正仕訳の作成という手順で行う。
■連結会計の主な論点
連結会計の主な論点としては、「投資と資本の相殺消去」、「当期純損益の按分」、「のれんの償却」、「内部取引の相殺消去」、「貸倒引当金の調整」、「未実現損益の消去」などがある。
■おわりに
連結決算業務をアウトソーシングしたとしても、自社内で連結決算を理解している人材の確保は不可欠である。

 

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