皆さんは、バランス・スコアカード(BSC)という言葉をご存知でしょうか?
*BSC:Balance Score Card
バランス・スコアカードとは、
「財務」「顧客」「社内プロセス」「学習と成長」の視点から業績を評価する技法
として提唱されたものです。
その考えは意外と古く、1992年にロバート・S・カプランとデビット・P・ノートンにより、発表されたものとなります。
一時期、日本でも経営管理ツールとしてもてはやされたこともあり、ご記憶の方も多いかもしれません。
今回は改めてバランス・スコアカードの有用性について考えてみたいと思います。
バランス・スコアカードの有用性
バランス・スコアカードとは、「財務」「顧客」「社内プロセス」「学習と成長」の視点から業績を評価する技法です。
①財務…株主に対してどのように行動するか
②顧客…顧客に対してどのように行動すべきか
③社内プロセス…どのような業務プロセスが必要になるか
④学習と成長…どのように組織・従業員を成長させるのか
の4つの視点から、会社や事業部門を評価します。
例えば、
株主価値を高めるためには、利益が重要になるとして、
利益を増加させるためには、売上高を増加させる必要があり、
そのために新規の顧客を確保する、あるいは既存の顧客を囲い込む
といったアクションが必要になります。
さらに、新規顧客の確保ないし既存顧客の囲い込みのためには、
ダイレクトメールや展示会、ユーザコミッティの開催が必要であり、
そのためにマーケティング部門や販売員を強化する等の対応が必要になる
と連鎖して考えて行くものです。
このようなバランス・スコアカードの考え方は、
☑戦略や計画を組織や社員へ浸透させることができる
☑戦略や計画と整合性ある目標を数値化して設定することができる
☑業務プロセスや社員意識の変革を促進する
といった有用性があり、近年では、単なる業績評価のシステムとしてだけでなく、戦略マネジメントシステム、さらには変革のフレームワークとして活用されることが多くなっています。
バランス・スコアカードの導入
バランス・スコアカードは、次の5つのステップから構成されています。
まず、”会社ないし事業の方向性”を決定すべく、
Step1:ミッション・ビジョン…ミッション定義、ビジョン設定、コア・バリュー定義
を行います。
そもそも会社の使命や存在価値は何か?そのビジョンは?を明確にして認識します。
そのうえで”戦略の可視化”を図り、
Step2:戦略…社内外の分析、戦略マップ策定、重要成功要因の定義
を実行して行きます。
社内外の強みや弱み、機会や脅威を分析(SWOT分析等)し、
*SWOT:Strength(強み)Weakness(弱み)Opportunity(機会)Threat(脅威)
「財務」「顧客」「社内プロセス」「学習と成長」の4つの視点を定義します。
その中で成功に必要な要因(CSF)を明確にして、
*CSF:Critical Success Factor(重要成功要因)
戦略マップとして落とし込みます。
そして、業績評価指標および数値目標として、
Step3:マネジメント…業績評価指標の設定、ターゲット設定
を行います。
業績評価指標としては、KGIとKPIが一般的に利用されることが多く、
*KGI:Key Goal Indicator(重要目標達成指標)
*KPI:Key Performance Indicator(重要業績評価指標)
例えば、4つの視点ごとに下記の通り設定されます。
①財務の視点…売上高成長率、営業利益率
②顧客の視点…新規案件数、既存リピート率
③社内プロセスの視点…アポ取得数、訪問顧客数
④学習と成長…営業増員数、研修実施数
そして、
Step4:変革…組織変革、業務プロセスの改善、社員教育・意識改革
Step5:モニタリング…業績評価、戦略評価、戦略の検証と調整
が実行・検証され、必要に応じて戦略を見直し、会社や事業の目標ないしビジョンが達成されるまで繰り返されます。
BSC導入効果:新しいビジネスモデルの創出
それでは、バランス・スコアカードの導入効果をいくつか紹介します。
まずは、バランス・スコアカードにより、新しいビジネスモデルが創出された事例です。
ある事業部門では、景気低迷の中、新しい収益源を模索していましたが、バランス・スコアカードの導入により、
☑将来どうしたいのか、今何をすべきかが明確になった(ビジョン定義)
☑戦略的思考が身に付き、成功する為のポイントが浮き彫りになった(CSF定義)
☑部門目標だけでなく、個人レベルでの目標が具体化された(KPI設定)
☑業務に対する理解が進み、新しい業務プロセスの構築に役立った(変革)
☑新しいビジネスに必要な要素が判明し、何が足りないのか理解できた(モニタリング)
という成果が得られました。
バランス・スコアカードは、収益拡大のための戦略立案、社内変革ツールとして利用することが可能です。
BSC導入効果:間接部門の評価と改善
次は、バランス・スコアカードによる間接部門の評価と改善事例です。
ある会社では、間接部門の縮小と業績評価の仕方に悩んでいましたが、バランス・スコアカードの導入により、
☑間接部門による財務的な貢献度を意識するようになった(ミッション定義)
☑間接部門の役割、重要性を再認識させられた(コアバリュー定義)
☑非財務数値による業績評価で社員のモチベーション向上に繋がった(KPI設定)
☑社内プロセスを見直すきっかけとなり、業務改善が進んだ(変革)
☑必要なスキルが明確になり、そのための研修が行われるようになった(変革)
という効果がありました。
バランス・スコアカードは、コスト低減のための目標設定、業務改善ツールとして利用することも可能です。
このようにバランス・スコアカードは、収益を創出する営業部門等だけでなく、会社を支える間接部門のコスト削減や効率化にも効果を発揮することができます。
ツールとして提唱されて20年以上が経過し、その導入や効果も実績が増えて来ています。
今だからこそバランス・スコアカードの有用性に目を向けてみては如何でしょうか?
まとめ
バランス・スコアカード
「財務」「顧客」「社内プロセス」「学習と成長」の視点から業績を評価する技法
1.ミッション・ビジョン⇒2.戦略⇒3.マネジメント⇒4.変革⇒5.モニタリング
バランス・スコアカードの有用性
☑戦略や計画を組織や社員へ浸透させることができる
☑戦略や計画と整合性ある目標を数値化して設定することができる
☑業務プロセスや社員意識の変革を促進する
BSC導入効果
収益拡大のための戦略立案、社内変革ツール
コスト低減のための目標設定、業務改善ツール