どのようなジャンルの仕事であっても、日々業務に携わっていると、業務担当者の退職や異動、新入社員研修等で、業務手順書が必要になる機会は多いものです。
しかし、実際に業務手順書を作成したことがある人は少なく、突然作成依頼を受けて作成し、何とかその場はしのいだものの、結局使われなくなってしまったというようなお話をよく耳にします。
このような業務手順書は、何が原因で使われなくなってしまったのでしょうか。
利用者が使いやすいと感じる業務手順書には、何が必要なのか。今回は、業務手順書作成のポイントを押さえていきたいと思います。
使いづらい業務手順書、その原因は?
仕事を行う上で、誰にでも初めての作業というものはつきものです。
ですが、初めて作業を行う際に、必ずしも誰か経験者が側にいて丁寧に作業手順を教えてもらえるとは限りません。
そんな時に頼りになるのが業務手順書!のはずですが、読んでみてもなんだか作業がしづらい。記載されている手順が良くわからず、どうしてこの作業を行っているのかピンとこない・・・そんな経験をしたことはないでしょうか。
なんだか使いづらいな、と思う業務手順書には、以下のような共通点があると考えます。
【使いづらい業務手順書の共通点】
①業務手順書に記載されている用語や、作業の意味がわからない
②必要な作業手順が見つけられない
③どうしてその作業を行うのか、目的がわからない
④記載内容が複数の意味に読み取れ、判断できない
⑤情報が古く、最新の手順が反映されていない
使いやすい業務手順書とは
では、使いやすい業務手順書とは、どのようなものでしょうか。
人によって様々な意見はあるかと思いますが、大きく分けて以下のようなポイントがあります。
【使いやすい業務手順書のポイント】
☑1.業務手順書の利用者が想定されている
業務手順書は、業務の担当者が作業をする際に利用するものですが、その担当者は必ずしも業界・業務に精通したベテランとは限りません。そのため、業務手順書は、初心者でも理解できる書き方にする必要があります。
業界特有の用語があり、その用語でないと説明ができないような場合には、用語集を別途作成する等できると良いですね。
☑2.構成が定まっており、タイトルや目次から作業内容が想像できる
この作業を明日までに終わらせる必要があるのに、記述箇所が見つけられないようでは、業務手順書はその役目を果たせません。
パッと見て、すぐに内容が拾えるような構成で、作業者にとってピンとくるキーワードがタイトルや目次に含まれていると、検索にもかかりやすくなり便利です。
☑3.目的が明記されており、業務全体を俯瞰することができる
手順に集中していると見落としがちなのですが、業務の目的を明確にするということも大事な要素です。
何のためにその作業をするのかがわからないと、その工程がどうして必要なのかわかりません。目的が明確であれば、同じ結果を得るために本当に必要な作業だけを判別でき、業務効率化に繋がることもあります。
☑4.作業内容や判断基準が明確である
いつ、どこで、誰が、何をきっかけに作業をスタートし、どのように処理をするのか。なぜその作業を行い、どのような結果が得られるのか。
よく、文章を書く時には5W1Hを気にするように言われますが、業務手順書作成においても重要なポイントです。
例えイレギュラー処理であっても、判断基準が明示されていれば、初めて対応する場合でも戸惑わず、誰にでもできる作業となります。
とはいえ、すべてを明確化するのは難しいケースもありますので、そのような場合には困ったときの対応方法も記載しておくと良いですね。
業務手順書を作成するメリット
業務手順書の利用者を想定し、わかりやすい記述で構成し、作業目的を明確に業務手順書を作成する…なんだか面倒になってきたな、と思われる方もいるかもしれません。
業務手順書を作成するのは、正直に言って楽な作業ではありません。通常の業務をこなしながら、業務手順書も作成するようなケースであれば、なかなかにハードな作業かと思います。
でも、考えてみてください。もし自分の部署に3人の新入社員が配属され、毎回同じことを繰り返し口頭で教えるとなったら、どれだけの工数がかかるでしょう。もちろん、1回で完璧に覚えられる保証はありませんから、当然1人につき1回教えればOKというわけではありません。まだ作業が覚えられていないのに、突然出張や異動が発生してしまったら?引継ぎは終えられるでしょうか。
業務手順書があれば、全く問題ないというわけではありませんが、最低限の業務はこなすことができると思います。新しい担当者は、業務手順書を読み、何度も復習ができますし、わからないポイントを絞って確認することもできるでしょう。引継ぎは確実に楽になりますし、同じ業務手順書を利用することで業務理解度や判断基準のばらつきをおさえ、属人化を防ぐことができます。
また、もし業務効率化や自動化のプロジェクトが企画された際には、対象業務の洗い出しや削減工数の判断に一役買ってくれるかもしれません。
業務手順書の作り方
では気を取り直して、業務手順書の作り方に進みます。
作り方の大まかな流れは、以下の通りです。
①スケジュールを作成する
まず決めておきたいのは、スケジュールです。完成の目安と利用開始時期はあらかじめ決めておきます。業務手順書作成の失敗例として、何となく作り始めたはいいものの、結局完成できなかったというのもよく聞く話です。ゴールを明確にし、適時フォローができる体制を整えておきましょう。
②ターゲットを絞る
ここでいうターゲットとは、業務手順書の利用者、記載する業務範囲、利用する目的の3点です。このポイントをあやふやなままに作成を進めると、業務手順書の記載粒度や構成が定まらず、使いづらい手順書となってしまいます。どのような目的で業務手順書を作成するのかによって、作成対象とする業務範囲を検討してください。
③形式・構成を決定する
形式は業務手順書の利用者が使いやすく、メンテナンスがしやすいものが適しています。
私のイチオシはExcelです。たいていどこの会社でも、OfficeソフトはPCに入っているかと思いますので、経費をかけず手軽に始めたい場合に重宝します。構成についてはまずは箇条書きで、業務手順書の目次と記載する内容を検討することをお勧めします。構成が決まったら、業務手順書のフォーマットを作成しましょう。
④業務手順を整理する
構成をもとに、業務手順をフォーマットに落としていきます。時系列に沿って、いつ、どのタイミングで、誰が、何を使い、どのように処理するのか。5W1Hを意識して整理します。文章は短文を心がけ、読みやすくまとめましょう。業務に精通している人ほど、資料名やツールの正式名称ではなく、略称で記載してしまう傾向がありますが、名称のブレは作業者の混乱を招きます。
そこはぐっとこらえ、面倒でも1つ1つ丁寧に書き出してくださいね。
⑤テスト運用する
業務手順書が作成できたら、早いうちに使ってみてください。実際に業務手順書を見ながら作業をしてみて、この説明も必要だったと気が付くことはよくあります。テスト運用で出た利用者からのフィードバックを業務手順書に反映し、より使いやすい手順書にしましょう。
⑥メンテナンス方法の検討
忘れてはいけない手順が、メンテナンス方法の検討です。業務手順書が使われなくなってしまう原因の1つは、最新手順が記載されていないことです。
常に最新の情報が反映されるよう、メンテナンスの頻度やタイミング、対応者を決めておくと良いでしょう。
業務手順書作成のポイント
業務手順書の作成は、それだけで本が1冊かけてしまうくらいボリュームがあるものなので、ここでは説明しきれていない部分も多々あります。構成や記載方法等、業務手順書作成のポイントはいろいろあるかと思いますが、使いやすい業務手順書のポイントは、利用者の立場になって作成すること、これに尽きると思います。
実際作ってみると、業務手順書作成は手間暇のかかるもので、けして簡単な作業ではありません。しかし、一時的な負荷を除けば、業務知識の共有や作業の属人化解消、業務効率化等、様々なメリットがあります。新入社員研修や、業務引継ぎのためだけではなく、定型業務からの脱却のためにも、業務手順書の作成を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
使いづらい業務手順書、その原因は?
①業務手順書に記載されている用語や、作業の意味がわからない
②必要な作業手順が見つけられない
③どうしてその作業を行うのか、目的がわからない
④記載内容が複数の意味に読み取れ、判断できない
⑤情報が古く、最新の手順が反映されていない
使いやすい業務手順書とは
☑1.業務手順書の利用者が想定されている
☑2.構成が定まっており、タイトルや目次から作業内容が想像できる
☑3.目的が明記されており、業務全体を俯瞰することができる
☑4.作業内容や判断基準が明確である
業務手順書を作成するメリット
業務手順書を作成することは簡単ではないが、作成することによって業務説明の時間が短縮でき、急な異動や担当者の不在があっても最低限必要な対応が取れる。また、同じ業務手順書を利用することで作業品質を保ち、属人化を防ぐことができる。
業務手順書の作り方
①スケジュールを作成する
②ターゲットを絞る
③形式・構成を決定する
④業務手順を整理する
⑤テスト運用する
⑥メンテナンス方法の検討
業務手順書作成のポイント
使いやすい業務手順書のポイントは、利用者の立場になって作成すること。
作成には手間暇がかかるが、業務知識の共有や作業の属人化解消、業務効率化等のメリットも得られる。