近年RPAというキーワードが徐々に普及しつつあります。雑誌や新聞、インターネットから始まり、最近では、TVやCMでも耳にするようになりました。
その影響もあって、「RPAって何ですか?」や「RPAで何ができるんですか?」という疑問を持つ人は、昨年の今頃と比較しても、かなり少なくなってきたのではないかと思います。
RPAの認知度が高まるに連れて導入企業も徐々に増えつつあり、「働き方改革」や「人手不足」を補うための最善のツールとして、様々な業界で注目されております。
しかし、全ての企業が、RPA導入に成功しているかというと、決してそうではありません。何故なら、「ロボットの開発がうまくできない」や「ロボットの開発に時間がかかってしまう」等の課題を抱えているケースが非常に多く、頭を抱えている企業が多いからです。
そこで今回は、一般的にロボット開発のどの部分が課題となり、それらの課題をどのように解決するのかを紹介します。
RPAの適用範囲~RPAの導入メリット~
そもそも、RPAはどのような業務を得意とし、何ができるのでしょうか?
RPAは、人が行うパソコン上の定型業務のみ自動化することができます。例えば、WebブラウザのデータをExcelに転記したり、メールで受信した情報を社内システムへ転記する単純作業が該当します。
①Webブラウザからデータの検索・抽出作業
②Excelファイルへの集計・加工作業
③システムへの入力・登録作業
上記の内容を見ると、RPAが対応できる作業はごく僅かだと思われるかもしれません。
しかし、システムへデータを転記するような“繰り返し作業”が、1日に100件あるいは1000件もの処理件数あったとした場合、いかがでしょうか?1件当たり5分の処理時間と換算した場合、膨大な作業時間が発生することが予測されます。
また、同じような作業を人がルーティンで行うと、時間の経過とともに集中力を失い、人為的なミスを引き起こす可能性も考えられます。こういった障害を解消するため、RPAに作業をシフトさせ、人為的なミスを排除し、作業スピード・品質向上へと繋がれば、十分メリットがあるのではないでしょうか?
定型業務が多い“金融業”では、RPAの導入に成功し、「口座開設時にお客様が入力した申込情報をシステムに転記する作業」をRPAで対応させている事例があるようです。
RPAのイメージ~ロボット作成の難易度~
よくネットや雑誌で見かけるRPAの謳い文句として、「直感で操作ができる」や「ノンプログラミングでも大丈夫」等のフレーズを目にしますが、果たしてどこまで本当なのか疑問です。
RPAの種類によっては、普段通りのパソコン作業をするだけで動作を記録することができる「記録型」の機能が搭載されている製品もあります。ただ、あくまでも人の動作を記録するだけなので、極めてシンプルな作業しか自動化することができず、複雑な処理(繰り返し処理等)を実行させるためには、ロボットのシナリオを作成しなければいけません。
※シナリオとは、ロボットに実行してほしい処理手順をフロー図で示したものです。
また、RPAの開発画面には、様々な機能(ツール)がデフォルトで用意されており、様々な機能を選択して、ロボットの動きを指示する必要があります。
例えば、RPAの代表的な機能として、ループ処理(同じ処理を繰り返し実行するプログラム)という機能がありますが、1つの機能に対して、数10種類ものパターンが存在しているため、臨機応変に利用する種類を判断する必要があります。
確かに「ノンプログラミングでも大丈夫」かもしれませんが、「直感で操作ができる」とまでは言い難く、ロボット開発は一概に簡単とは言えないという印象を受けます。
※RPAの種類によっては、プログラミング言語を使用して開発する製品も存在します。
RPAの開発~ロボット作成における課題~
実際にRPAを導入し、現場ユーザがロボットの開発をする際、具体的にどのような部分でロボット開発における困難に直面するのか3つの例を紹介いたします。
①ループ処理
ある一連のシナリオの作成が完了し、繰り返し同じ処理を実行させるためにはループ処理を実行する必要がありますが、実行するタイミングを誤ってしてしまうと、ロボットは意図しない動きをしてしまいます。ループ処理を問題なく実行させるためには、前後のシナリオの動きに合わせて組み込む必要がありますが、その正確なタイミングを計る点に苦労する可能性があります。
②エラー処理
ロボットは一度実行したら、基本的には一連の処理が終えるまでは動き続けますが、万が一、実行途中に何らかのトラブルが発生してしまうとロボットの動きは全て停止してしまいます。そのため、エラーを回避するための処理をロボットに指示する必要がありますが、その対処方法を見出し、処理手順を設定する点に苦労する可能性があります。
③条件分岐
条件分岐とは、ロボットが実行するフローを様々な条件によって分岐させ、その条件に一致した動きをするようロボットに指示することです。例えば、ある質問に対する回答が“YES”であればAの道へ、逆に“NO”であればBの道へと条件に対する分岐を作成する必要がありますが、その分岐を作るための関数を組み込んで設定をすることに苦労する可能性があります。
これらのことより、「ある程度のITスキル」が身に付いていた方が、ロボット開発がスムーズに進む可能性が高いと言えるでしょう。
例えば、上記に挙げたループ処理のタイミングや条件分岐の設定等、ITスキルの“勘所”があれば、難なくこなすことができるのではないでしょうか?
RPAの開発~ロボット作成における課題解決~
最近の傾向として、RPAの開発から運用までの全ての業務を委託できる開発ベンダーが増えたため、RPAの開発に悩まれる企業は、以前よりも少なくなったのかもしれません。
しかし、RPAの開発ベンダーに支援を委託するためには、それなりのコストが発生するため、利用できる企業は限られてしまいます。また、委託している企業も、いずれは内製化をすることとなるでしょう。
そのためには、やはり自社でRPAの開発を学ぶための学習環境を整える必要があると考えます。ロボットの作成手法を学ぶためには、ベンダーが提供している支援サービスを活用するのも1つの手です。eラーニングといったツールを利用して、ロボット作成の実例を資料や動画を見ながら自己学習したり、通学形式の教室型スキルアップ研修に参加し、専任講師による対面講義により、疑問点等をその場で解消したりするなど、より高度なロボット作成を実現できるように学習できる環境が重要です。
RPAを導入・開発するうえでは、ロボットを作成するための学習環境が非常に重要です。将来的にもベンダーの力を借りて運用していくのなら別ですが、自社内で開発・運用を続けていくのであれば、RPAを学習できる環境の確保が大切です。RPA製品の優劣だけで導入を決めるのではなく、将来的な運用まで見定めてRPAの選定を行うべきと言えます。
RPAの開発がうまくいかずに悩まれている方、あるいは、RPAの導入を検討されている方は、各ベンダーが提供している学習環境を積極的に活用し、ノウハウを習得されてみてはいかがでしょうか?
まとめ
RPAの適用範囲~RPAの導入メリット~
・RPAは人がPC上で行う単純かつ定型化されている業務を得意とする。
・RPAを導入することにより、作業時間の削減や人為的なミスを防ぐことができる。
RPAのイメージ~ロボット作成の難易度~
・ロボットに複雑な処理を実行させるためには、シナリオを作成する必要がある。
・ロボット開発は、ノンプログラミングでも大丈夫だが、直感で操作をするのは難しい。
RPAの開発~ロボット作成における課題~
・ロボットのシナリオを実行するタイミングを誤ってしまうと、意図しない動きをする。
・ロボットがあらゆる条件に対応できるよう、道筋を立ててあげなければいけない。
RPAの開発~ロボット作成における課題解決~
・自社でRPAの開発・運用をするには、学習環境を整える必要がある。
・将来的な運用まで見定めてRPAの選定をする必要がある。