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業務改善の第一歩!「業務棚卸」を成功させるポイント

2024年03月21日

 

多くの企業では日々の業務を改善するために、作業時間を削減する「業務効率化」、属人的な業務を解消する「業務標準化」、繁忙期の業務量を軽減する「業務平準化」等の施策を進めています。これらの施策を推進するために必要不可欠なのは業務の可視化です。まずは業務を見えるようにし、問題を抱えている業務を明確にすることで、施策を検討する大元の情報として利用します。
業務可視化では、業務担当者へのヒアリング等で情報を取得する「業務棚卸」を行い、業務フロー図や業務一覧表を作成し纏めていきます。しかし、この情報取得がうまくできなかったり、作成した業務フロー図、業務一覧表をうまく活用できずに苦労する企業も多いです。
今回は業務棚卸のステップを解説しながら、業務一覧表の作成に関するポイントをお伝えしていきます。

 

業務棚卸の流れ

業務可視化における、業務棚卸のステップは大きく以下の3つに分かれますので、まずは流れを説明していきます。

 

・ステップ1:業務棚卸範囲の決定と関連情報の収集・確認
・ステップ2:業務棚卸調査票の作成と配付
・ステップ3:確認事項の抽出とヒアリング

 

ステップ1では改善を行いたい業務を決めて全体像を把握してから、業務棚卸を実施するための情報を整えて準備を進めます。その後のステップ2ではステップ1の情報を基にして、業務担当者から業務内容を提供してもらうための業務棚卸調査票を作成し、記載ルール等も決めたうえで、業務担当者に記載を依頼し業務棚卸を始めていきます。最後のステップ3として、回収した業務棚卸調査票から業務一覧表を作成し、業務担当者へ確認したい疑問点をまとめた上で個別にヒアリングを実施して、業務一覧表を補完しながら最終化を行います。

 

各ステップで発生する作業の種類は多くありませんが、それぞれに押さえておくべき設定やポイントが存在しています。それらを曖昧にしたり、抜け漏れがあると業務棚卸の結果が不十分となり、作成する業務一覧表自体も中途半端な状態になってしまいます。当然ながらそのような状態では、業務の効率化や標準化の施策を検討することはできず、業務改善を行うこと自体が難しくなります。
このような状況に陥らないために、次からは各ステップで作業の手戻りを防ぎながら、業務棚卸を成功させるために気をつけたいポイントを説明していきます。

 

ステップ1:業務棚卸範囲の決定と関連情報の収集・確認

ステップ1では、まず業務棚卸を実施する範囲を決めるため、社内にある業務に関する規程や業務分掌・職務分掌といった資料を収集します。関連資料を確認し、棚卸対象となる業務の全体像を把握したら、業務をいくつかのグループにまとめるための「業務階層・体系整理」を行います。この「業務階層・体系整理」がステップ1の重要なポイントです。

 

■業務階層・体系整理の目的
業務階層・体系整理とは、業務棚卸の対象とする業務を業務レベル1・業務レベル2や大分類・中分類のようにグループ化する作業です。この後のステップ2で、対象業務の担当者に業務内容を記載してもらう業務棚卸調査票を作成しますが、そこで担当者が自由に情報を記入できるようにしてしまうと、担当者によって記載内容や粒度が異なり収拾がつかなくなります。そのため、業務の記載粒度を一定にする枠組みとして業務階層をあらかじめ設けておきます

 

■業務階層・体系整理の方法
業務階層・体系整理を進める方法としては、業務レベル1や大分類という大きなグループを定義し、それに紐づく形で業務レベル2や中分類という少し小さめのグループを定義していきます。例えば、業務レベル1を営業管理とすれば、業務レベル2は営業管理に紐づく顧客管理や商談管理等を定義し、業務レベル1を経理財務とすれば、業務レベル2は債権業務や債務管理等を定義するケースが多いです。
グループ定義の基になる情報は社内規程や業務分掌等の資料ですが、それらが十分に整備されてない場合には、担当者から手順書やマニュアルを収集したり、自社の業界や規模にあった業務についてインターネット等で情報収集する方法があります。

 

このように業務階層・体系整理を行ったあとは、実際に担当者から情報を収集するための「業務棚卸調査票」フォーマットを作成していきます。次章ではこの「業務棚卸調査票」作成におけるポイントを説明していきます。

 

ステップ2:業務棚卸調査票の作成と配付

ステップ2では、対象業務の担当者から業務内容や付随情報を収集することを目的とした業務棚卸調査票のフォーマットを作成します。ステップ1の「業務階層・体系整理」で定義した業務レベルや分類を基にしながら、業務の実施頻度や作業時間・難易度・インプット・アウトプットの項目等の設定を行います。
調査票の項目以外で大切になるのが、業務棚卸調査票の記載ルールです。ルールを設けずに担当者へ配付しただけでは、欲しい情報がうまく得られずに手戻りが発生する場合があります。ここでは業務棚卸調査票の記載ルールに関するポイントを説明します。

 

■記載ルールの設定
業務棚卸調査票の作成においては、記載方法や記載粒度を揃えるためのルールを設定することが重要です。
例えば、
・自分が担当者ではない業務は記載しない。(=自分が担当する業務のみを記載)
・作業時間であれば、1業務(1行)あたりの作業時間は最大4時間程度とする。
等です。
あらかじめ記載ルールを設定しておくことで、担当者ごとに発生しうる記載のばらつきを抑える効果があります。

 

■記載ルールの周知
担当者に調査票の記載を依頼する際には、アナウンスやメール連絡だけで済ませるのではなく、担当者を集めて説明会を開催するのが効果的です。業務棚卸調査票の具体例やルールを直接説明することでお互いの認識違いを防ぐことができるだけでなく、そもそも業務棚卸調査票の記載依頼をする背景や目的も伝えることで、より協力を得やすくなります。

 

なお担当者が業務棚卸調査票を記載するにあたり、不明点が発生した場合の問合せ先や問合せ方法も決めておいてから配付することも、業務棚卸を成功させるためには必要なポイントです。続いては業務棚卸調査票を回収した後の動きを説明していきます。

 

ステップ3:確認事項の抽出とヒアリング

ステップ3では、ステップ2で担当者に配布した業務棚卸調査票を回収し、業務一覧表を作成していきます。複数ある業務棚卸調査票をまとめ業務一覧表を作成していく中で、業務の粒度や区分の違い、同じ業務に関わらず作業時間が異なる等、確認事項が明確になります。これら確認事項はヒアリングによって埋めていきますが、ここにもポイントがあります。

 

■ヒアリング先の分別
確認事項は管理監督者と業務担当者の2軸に分けてヒアリングを行うことがポイントになります。業務に対する視野が管理監督者と業務担当者では異なるため、2軸に分けてヒアリングを行うことで情報の客観性を高めることが可能となります。

 

①管理監督者へのヒアリング
管理監督者へは業務区分や業務粒度、業務に抜け漏れがないかのヒアリングを行います。管理監督者は業務全体を俯瞰して見ています。細かい業務内容というよりは同じ業務のようだが業務担当者によって記載している情報が違う場合や、業務の網羅性という点についてヒアリングを行います。

 

②業務担当者へのヒアリング
一方、業務担当者に対しては、各業務に関する確認事項のヒアリングを行います。具体的には、インプット・アウトプットとして記載されている帳票等があればその内容を確認したり、管理監督者へのヒアリングによって抜け漏れ業務が発覚している場合は、その点について実情を確認します。

 

2軸に分けるヒアリングを説明しましたが、ヒアリングした結果は随時、業務一覧表に反映させていきます。確認事項の抽出、ヒアリング、業務一覧表への反映を繰り返すことで、より精密かつ網羅的な業務一覧表を作成することができます。

 

業務一覧表の活用事例

最後に、ステップ1~ステップ3を経て作成した業務一覧表の活用事例を紹介していきます。

 

・業務標準化分析による活用事例
【課題】
ある企業の部門では業務の属人化が課題となっていました。部門の中でも特定の人だけが理解していて重要度の高い業務も存在しており、各担当の業務負荷も高くなっていたため、将来的なリスクとして認識してはいたものの業務に関連する情報は部内でまとまっておらず、対策検討を進められずにいました。
【対応】
担当者たちに業務棚卸調査票を配付して業務棚卸を実施し、各業務ごとにインプット・アウトプット、また業務の難易度に関する情報を収集し、状況の整理が行われました。業務一覧表を基にして整備されていないマニュアルや手順書の特定や、業務の難易度による仕分けを行った結果、マニュアルの整備計画策定と実行、難易度の低い業務のアウトソーシングを含む部外移管が行われ、業務の平準化に繋がりました。

 

・業務負荷分析による活用事例
【課題】
基幹システムの導入を検討していた企業では、社内でシステム化する業務の優先順位をつけることができず、重要視する業務やシステム機能の絞り込みに苦心していました。
【対応】
業務一覧表に作業時間や発生回数の項目を設定して情報収集し、業務レベルごとに年間作業時間を算出して高負荷になっている業務を抽出する方法を採用しました。その結果、費用対効果の点で優先してシステム化を進めるべき業務とそうではない業務が明確になり、より現実的な計画策定に繋がりました。

 

このように精密な業務一覧表があれば、様々な切り口で業務分析を行うことが可能になり、業務改善における施策検討や計画作成に活用することができます

 

まとめ

■業務棚卸の流れ
業務棚卸は「業務棚卸範囲の決定と関連情報の収集・確認」、「業務棚卸調査票の作成と配付」、「確認事項の抽出とヒアリング」の3つのステップで進める。

 

■ステップ1:業務棚卸範囲の決定と関連情報の収集・確認
業務分掌や職務分掌をもとに棚卸範囲の業務全体像を把握し、業務をいくつかのグループにまとめるための「業務階層・体系整理」を行う。

 

■ステップ2:業務棚卸調査票の作成と配付
業務棚卸調査表の記載方法や記載粒度を揃えるためのルールをあらかじめ設定することで、担当者ごとに発生しうる記載のばらつきを抑えることができる。

 

■ステップ3:確認事項の抽出とヒアリング
確認事項のヒアリングは、管理監督者と業務担当者の2軸に分けてヒアリングを行うことで、精密かつ網羅的な業務一覧表を作成することができる。

 

■業務一覧表の活用事例
業務棚卸によって精密な業務一覧表が作成できれば、様々な切り口で業務分析を行うことが可能になり、業務改善における施策検討や計画作成に活用することができる。

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