経理の基本的な業務は、日々の取引によって発生するお金やモノの流れを記録(記帳)することですので、他の部署と比べて『入力作業』が多いという特徴があります。記録した会計情報は、税務申告や経営管理等で利用されますので、ミスが許されず、正確性が求められるという特徴もあります。また、企業によって異なりますが、請求書や領収書といった書類作成や、決算書・税務申告書の作成、経営管理といった役割を経理部門が担っていることもあります。
このような経理業務をサポートするためのITツールとして、会計システムが存在しますが、ひと昔前と異なり様々な機能がリリースされています。今回は、『入力』、『書類作成』、『経営分析』と3つの軸に分けて機能のトレンドを紹介します。
会計システムのトレンド①~入力作業の省力化~
経理部門において最も負担の大きい作業は、仕訳や記帳といった日々の入力作業ではないでしょうか。正確さとスピードの両立を求められるので、もしも1件ずつ手入力で打ち込みをする場合は、担当者にとって重い負荷のかかる作業となります。このような入力作業をサポートするため、近年の会計システムには様々な機能が搭載されています。
・スキャン画像やPDFからの自動起票
AI-OCR機能によって、領収書、請求書、納品書等のPDFファイル、あるいはスキャナやスマートフォン等で撮影した領収書の画像から文字情報を読み取って起票する機能です。画像データを選んで読み込むだけなので入力の手間が省けます。最近は請求書や納品書をPDFで送るケースも増えているので、その点でも使いやすい機能といえます。
・エクセルファイルからの自動起票
経費精算表、小口現金管理表、その他システムから出力した集計表等、経理部門で管理・作成している各種エクセルファイルを、ほぼ加工することなく取り込んで自動起票することができる機能です。業務上の都合で作成している管理表をそのままシステムの取り込めるため、同じデータを何度も入力する手間を省くことが可能です。
・銀行、クレジットカード等の取引データからの自動起票
クレジットカード、電子マネー、ECサイト等とオンラインで連携し、取引データの明細を会計システムが自動で取得し起票することができる機能です。法人向けのコーポレートカードを利用している場合、この機能によって入力作業を大幅に削減することが可能になります。
・AIによる自動仕訳・仕訳提案・自動記帳
過去に入力した領収書や請求書、納品書等のデータをAIが学習し、仕訳をAIが自動で作成してくれたり、入力の際に選択肢を提案してくれる機能です。AIの処理・判断が本当に正しいかの最終チェックは必要ですが、入力作業を大幅に削減することができます。
自動化が進めば入力ミスの削減にも繋がりますので、ミスの修正にかかる時間を削減できる点でも効率化が進みます。企業によっては膨大な取引件数を扱うこともあるため、入力効率が上がる機能は積極的に活用した方が良いでしょう。
会計システムのトレンド②~書類作成の省力化~
日々の入力業務に加えて請求書の発行や送付に関する作業に対応するため、特に取引先の多い企業の経理部門の繁忙期には、こうしたルーチンワークだけで業務が溢れかえってしまうのが日常でした。しかし最新の会計システムであれば、納品書、請求書、財務諸表等も含めた各種書類をクリック一つで出力させることが可能です。
・法人税申告書等の自動作成・電子申告
日々の入力データから、法人税申告や消費税申告等の際に添付する財務諸表データ等、各種資料を自動作成する機能になります。会計システムによっては資料の作成だけでなく電子申告まで対応しているものもありますので、電子申告用のソフトを別途用意する必要はありません。この場合、普段使用している会計システム上で資料作成から納税手続まで完結するので、申告業務の手間を大きく削減できます。
・見積、請求書、納品書の簡単作成
あらかじめ用意されたテンプレートを利用して、簡単に見積書等を作成する機能です。受注になれば見積書のデータを基に納品書や請求書を作成することで手間をかけずに対応でき、そのまま帳簿付けまで対応することが可能です。各書類作成の手間が省けるのはもちろんですが、見積書通りに納品書や請求書が発行される仕組みは、正しく販売フローが運用されているかという管理面においても有用です。
・定期的な請求書の自動発行、送付
あらかじめ設定した周期通りに自動で請求書を発行し、自動送付する機能です。手入力でひとつずつ用意する手間を省けるため、取引件数に拠っては大きな負担軽減につながります。電子メール等を利用して請求書データを送信する形が主ですが、郵送代行サービスと連携して紙ベースでの送付に対応しているものもあります。
このような会計システムの機能を有効活用することで、様々な書類作成に割いている工数を大幅に圧縮することができます。また、月末や決算時期等繁忙期における経理部門の業務負荷軽減に繋がります。
会計システムのトレンド③~経営分析の効率化・拡充~
集計した会計データをまとめ経営分析に繋げることが、経理部門に求められる最も重要な役割ではないでしょうか。経営分析には様々な切り口が存在するため、自社の業態や時勢等に合わせて分析手法を適宜切り替えながら考える必要があります。こうした経営分析に関する幅広いニーズに効率良く対応できるよう、会計システム側で様々な機能が準備されています。
・分析帳票の簡単出力
日々の取引入力より、月ごとの推移や昨年対比、グラフや表形式等一通りの表示方法から選択してレポートを作成することができます。現在の経営状況を簡単に出力できるため、経理部門に大きな負担をかけることなく、経営層はタイムリーな現状把握が可能になります。
・オリジナル帳票の作成
管理会計用の自由な科目体系や部門体系を管理できるようにして、企業が独自に設定しているKPI等を会計システムに取り込むことにより、多角的な経営分析を可能にするための機能です。企業ごとに違った考え方がありますし、時間経過によって正しい考え方も変わるものですが、こうしたカスタマイズ機能を活用することにより、自社にとって適切な経営分析用のフォーマットを作りこむことができます。
・BIツール等との外部連携
会計システムに蓄積された情報をBI(経営分析・予測)ツールに連携し、分析を行います。BIツールの機能としては、データの中から関連性を分析・予測する『データマイニング機能』や『シミュレーション機能』等がありますが、このような経営分析に特化した外部ツールと連携することで、会計システムだけでは手の届かない深い部分をフォローできます。以前は会計システムとBIツールのデータ連携のため、インターフェースを構築する必要がありましたが、近年は標準機能として組み込まれていますので、構築作業やその後のメンテナンス保守に要するリソースが大きく緩和されました。
会計システム内にKPIを取り込んでカスタマイズしたり、あるいはBIツールを別途導入することでより専門的な経営分析に繋げることが可能です。しかし複雑な分析をせずとも、効率良くタイムリーな現状把握ができる点において、会計システムを利用するメリットは充分に大きいといえるでしょう。
このように、近年の会計システムには経理部門をサポートする機能が増えています。ITシステムは従来のオンプレミス型からSaaS型での提供が主流となり、中小企業等での小規模利用等も容易になりましたので、新しい会計システムで業務の効率化を図ってはいかがでしょうか。
まとめ
■入力作業の省力化
・スキャン画像やPDFからの自動起票
AI-OCR機能によって領収書等のPDFファイルやスマートフォンで撮影した写真画像から起票する機能
・エクセルファイルからの自動起票
経費精算表等理部門で管理・作成している各種エクセルファイルを取り込んで起票する機能
・銀行、クレジットカード等の取引データからの自動起票
クレジットカードや電子マネー等の取引データの明細を取得し起票する機能
・AIによる自動仕訳・仕訳提案・自動記帳
過去に入力した領収書等のデータをAIが学習し、仕訳先をAIが選択する機能
■書類作成の省力化
・法人税申告書等の自動作成・電子申告
日々の入力データから、財務諸表データ等各種管理資料を自動作成する機能
・見積、請求書、納品書の簡単作成
あらかじめ用意されたテンプレートを利用して、簡単に見積書等を作成する機能
・定期的な請求書の自動発行、送付
あらかじめ設定した周期通りに自動で請求書を発行し、自動送付する機能
■経営分析の効率化・拡充
・分析帳票の簡単出力
日々の取引入力から、月ごとの推移や昨年対比のレポートを作成する機能
・オリジナル帳票の作成
企業が独自に設定しているKPI等、管理会計用の科目体系や部門体系を会計システム内に取り込む機能
・BIツール等との外部連携
会計システム内に蓄積した情報を、別のBI(経営分析・予測)ツールへデータ連携する機能