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事例から学ぶ!海外拠点に対する内部監査のポイント

2018年11月22日

 

各企業様では、海外に工場や販売子会社を設立する等、海外展開を積極的に進めている状況にあります。特に東南アジアを中心に海外展開が進められており、この傾向は今後も続くものと想定されます。しかし、いざ海外拠点の監査を進めようとしても、ノウハウが無く、どのように進めるべきか悩まれている担当者様も多いようです。
今回は、海外拠点の内部監査対応について、事例を交えながら、どのように進めるべきかを解説していきたいと思います。


海外拠点に対する監査の必要性

大企業から中堅・中小企業まで、積極的に海外進出をしており、特に東南アジアを中心に海外現地法人を開設するケースが増えています。一方で、物理的に距離が離れていることもあり、現地法人の管理状況を親会社が把握できていないケースも珍しくありません。別法人であっても、企業グループとして、現地法人の管理責任は親会社に問われます。最近では、海外法人における不正や不祥事等が発生し、メディアで取り上げられるケースも多くなっています。

 

そういった中、経営者としても海外拠点の管理状況は懸念される事項となっており、内部監査部門に対し、海外拠点の監査を行うように指示することも多く、海外監査の重要性は高まっています。

 

 

海外監査における課題

海外拠点の内部監査を行うにあたり、企業様によっては、いくつかの課題があるようです。皆様の会社で、以下のようなことはないでしょうか。

 

・海外監査に係るスタッフが足りない
内部監査要員が絶対的に不足しており、海外監査をしようとしても、手が回っていない。

 

・海外監査に関する経験ノウハウがない
そもそも監査に必要なスキルや監査ノウハウが社内に蓄積されておらず、また、海外監査を経験したことがある担当者もおらず、海外監査のノウハウ自体がない。

 

・海外現地法人の状況が全くわからない
欧米での監査を実施したことはあるが、東南アジアや新興国での監査を実施したことがなく、海外現地法人の管理状況が全く把握できていない。

 

・ITや情報セキュリティ監査を実施したい
海外現地法人のIT統制(全社・全般)や情報セキュリティのレベルを把握しておらず、上場会社の一般的な管理水準のレベルまではクリアしておきたい。

 

監査のスキルやノウハウが社内に蓄積されておらず、かつ、海外監査経験者や監査スタッフも確保できていないことが見受けられます。リソース面とともに、どのように監査を行うか、ノウハウの面で悩まれている会社様も多いようです。

 

 

海外拠点における内部監査対応

では、海外拠点の内部監査は、どのように行っていくのでしょうか。基本的な進め方は、国内拠点に対する内部監査と同様になりますが、海外対応だからこそ、検討すべき点があります。以下、海外拠点における内部監査対応について見ていきます。

 

①予備調査
各国における商習慣や法制度、文化等、海外拠点特有の情報をできるだけ多く収集し、海外拠点の状況を把握します。一見、内部監査に関係のない事項でも、内部監査に影響を与えることがあります。例えば、中国の旧正月などの休暇は、往査の実施時期に影響を与えます。

 

②個別監査計画の立案
海外拠点の商習慣や法制度、文化等を踏まえ、特有のリスクを抽出します。
また、統制の成熟度、監査人員や予算等も踏まえ、現地訪問の要否を検討します。
国内と違い、海外拠点への訪問となると、移動を含め、費用や時間を要するため、訪問の要否を慎重に検討する必要があります。

 

海外監査における監査計画の立て方については、以下の記事を参考にしてください。
海外監査における予備調査と監査計画~予備調査により海外監査が分かる~

 

③監査の通知
ヒアリング内容、出席者、確認資料等の監査内容と合わせて、改善実施の指導についても、海外拠点側に通知します。

 

④監査の実施
ヒアリング・確認資料の分析等により、海外拠点の監査を行います。現地に訪問しない場合はCSA(Control Self Assessment)の結果も活用します。CSAとは、現地側で監査項目に対する管理状況を回答し、その有効性を自ら検証・評価するものです。
内部監査部門が現地に訪問しない代替として、現地側で管理状況の確認を行います。

 

⑤監査報告
監査結果・改善計画を監査報告書に取り纏めます。監査報告を行う際は、親会社の経営者だけでなく、子会社の経営者関係者へ監査報告書の説明を行います。

 

⑥監査結果のフィードバック
監査結果および改善案をフィードバックします。認識の齟齬がないか協議を行い、不足している情報は、フィードバックを行う中で確認します。海外監査は、限られた時間や情報の中で対応せざるを得ないことも多くあります。そこで、監査結果のフィードバックを行いながら、不明点の確認や監査内容の認識合わせを行い、監査の精度を高めていきます。

 

⑦フォローアップ監査
統制の成熟度、不備状況等を考慮し、現地訪問の要否を検討します。現地に訪問しない場合は、質問票を配布し、改善状況を確認します。

 

海外拠点の商習慣や法制度、文化等を踏まえ、監査計画を策定し、監査計画に基づいて海外拠点の往査を行います。往査の要否など、海外対応だからこそ検討すべき事項もあります。

 

 

事例から見る海外監査のポイント

海外拠点の監査対応を行ううえでの課題として、「海外監査のノウハウがない」という点がありました。そこで、いくつか海外監査の事例を紹介し、そこから海外監査対応のポイントを挙げていきたいと思います。

 

■事例1:ベトナム拠点の監査事例(システム開発業)
ベトナムに拠点があるシステム開発を行っている企業の監査事例です。システム開発という業種の特性から、情報セキュリティといった個別テーマを監査手続に含め、監査を往査最終日には、気づき事項をフィードバックし、改善指導を行い、後日、改善活動の実施を促す等、フォローアップ監査まで実施しています。

 

海外監査では、『保証(アシュアランス)』するだけでなく、『指導(コンサルティング)』が重要です。海外拠点側もそれを期待していることが多く、監査結果の報告には、現地スタッフも同席のうえ課題や改善策を共有・協議すべきであると考えます。

 

■事例2:台湾拠点の監査事例(生産工場)
台湾に拠点がある生産工場の監査事例です。予備調査の中で、この拠点がISO9000を取得していることを把握し、生産に関わる手順書や記録が適切に管理されていることを確認しました。そこで、生産に関わる内容を監査項目から外し、契約管理や従業員の勤怠管理、コンプライアンス等を中心に監査を行いました。

 

ISOを取得している海外拠点も多いかと思います。時間が限られている往査の中では、ISO等の認証状況を踏まえ、監査項目を設定するのが良いと考えられます。

 

■事例3:中国拠点の監査事例(販売子会社)
中国(上海)に拠点がある化学品販売を行っている子会社の監査事例です。
現地の会計基準や問題点等の情報を収集するため、現地の監査法人にもヒアリングを行い、現状の問題点や課題、改善事項等を把握しました。

 

現地の会計基準や法制度は、現地の監査法人や弁護士等、外部の専門家から情報を収集するのが効率的です。また、現地法人の監査を行う中で課題を重点的に確認すべき監査事項も明らかになります。

 

海外拠点の監査(特に東南アジア)では、アシュアランス(保証)だけでなく、コンサルティング(改善指導)の重要性が増していきます。また、監査を円滑に進めるためには、現地と密にコミュニケーションを取ることがポイントになります。
「コンサルティング」「コミュニケーション」を重視し、海外監査を進めることをお薦めします。

 

 

まとめ

・海外拠点に対する監査の必要性
現地法人の管理状況や管理精度について、親会社が把握できていないケースもある。
海外拠点の管理状況は経営者の懸念事項となっており、海外監査の必要性が増している。

 

・海外監査における課題
そもそも内部監査部門の人員が不足しており、海外監査まで手が回っていない。
海外監査を経験したことがある担当者もおらず、海外監査のノウハウ自体がない。

 

・事例から見る海外監査のポイント
『保証(アシュアランス)』するだけでなく、『指導(コンサルティング)』も必要である。
監査法人や弁護士等、外部の専門家から現地の会計基準や法制度の情報を収集する。

 

海外拠点における往査に関するポイントについて、以下にアップしております。
こちらも合わせて、ご確認ください。

海外監査における往査の実施~海外拠点における効率的な往査の進め方~

 

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