今回は、決算早期化の改善施策について考えてみたいと思います。
決算早期化のためのアクションを平たく言えば、まず「決算発表の目標」を定め、「決算早期化阻害要因」を抽出し、その阻害要因を解決ないし改善する「施策を決定・実行」していくことになります。
決算早期化の改善施策
決算早期化の改善施策をカテゴリー分けすると、「業務改善」と「システム改善」に区分することができます。業務の進め方を見直す等、業務面から改善するものと、システムの不備などを改善するものに大別することができます。
また、単に決算日程を短縮するための施策としては、見積り数値を利用したり、請求書等の締日を変更するといった「適用ルールの変更」という最終施策もあります。ただ、この適用ルールは、実際の金額では無く、予め見積もった金額で伝票を計上してしまう、末日締めから25日締めに変更してしまう、といったルールの変更に過ぎず、何ら改善を伴うものではありません。そのため、決算早期化を行う上では、最後の手段であって、我々コンサルタントの中では「禁じ手」と呼んだりしています。
決算早期化施策としての業務・システム改善
決算早期化施策としての業務改善およびシステム改善についてもう少しだけ細かく解説したいと思います。
まず業務改善としては、
・業務(経理)…決算担当部署(経理)における業務手順の見直し
・業務(関連部署)…社内決算関連部署(現場)の業務の見直し
・業務(グループ)…グループ会社内(関係会社との取引)での取引ルールの見直し
・業務(社外)…社外(顧客、業者、銀行)との取引ルールの見直し
といった形で分類することができます。
”経理”から”社外”を含めた改善策を行うにつれて、改善のハードルが高くなります。つまり、経理だけでは改善できません。
次にシステム改善としては、
・PC…PC簡易シートないしプログラム作成(Excelマクロ等)
・IF…IF(インターフェース)の構築・改良
・システム改良…システム機能改良(既存システムの改修)
・システム構築…システム機能構築(システムリプレイス、パッケージの利用等)
といった対応があります。”PC”から"システム構築"の改善策へ移るにつれて、改善の規模が大きくなり、また相応の時間とお金を要するものとなります。
決算早期化の鍵:情報の早期入手
このように決算早期化の改善策としては、業務の変更やシステムの改修といったように各種各様の対策がありますが、ITが高度化してERPやパッケージ・システムが浸透した時代では、システムに大きな課題を抱えている企業は少ないです。
また、幾多のシステム改編や内部統制法制度対応を経験した企業においては、明らかに非効率な業務を行っている企業は珍しく、抜本的な業務改革を必要とする企業は少ないと思います。
早期化を達成するために必要なことは、『情報を早期に入手する』。これが早期化達成のための最大の鍵となります。
いくら高度なシステムを利用していても、情報の入手が遅く、会計データをインプットできなければ、その後の処理や計算が回せません。
☑ 取引先からの請求書が遅ければ、伝票が起票できません。
☑ 経費の提出・確定が遅ければ、原価が計算できません。
必要な情報がそろってさえいれば、その後の処理や計算は迅速です。
ERPやパッケージを使用している会社であれば、後続の処理や計算自体に時間がかかっているケースは皆無と言えます。
早期化の鍵は、情報の早期入手です。
決算早期化の意外な落とし穴:承認や会議体待ち
決算早期化において、意外な落とし穴となるのが、『承認の遅れ』だったり、『会議体の多さ』だったりします。
☑ 管理者の承認待ちで、決算数値の確定が遅れる…
☑ 経営者への報告資料作成に時間がかかる…
☑ 決算発表までに通す会議体が多くて時間を要する…
といったことが決算早期化に大きく影響していることがあります。
☑ 承認プロセスの削減、決算優先のスケジュール確立
☑ 報告資料の簡素化・集約化、月次決算の充実化
☑ 会議体の削減、報告プロセスの簡素化
といった対策を採ることにより、3~5日の短縮につながったという事例もありますので、まずはこの点から着手してみるのもありかと思います。経理業務を大きく変更することなく、決算発表までの日程短縮が期待できます。
決算早期化に特効薬は無い!?
決算早期化についてご相談を受けると、「抜本的な解決策」や「即効性のある対応策」を教えて欲しいとの要望をよく受けるのですが、残念ながら、そのような特効薬はありません。それはコンサルタントやコンサルティングに頂く幻想です。
決算早期化に”特効薬”や”打ち出の小槌”のようなものが存在するのではなく、むしろ”当たり前の事”が”当たり前のようにできていない”のが決算を遅延させる多くの原因です。
自分たちの業務やシステムを見つめ直し、ちょっとした工夫や手順の変更で対応できることも数多くあります。
一度、早期化の観点から自社の業務を見直してみてはどうでしょうか?必ずや「無駄な業務」が発見できるはずです。
まとめ
決算早期化の改善施策
「業務改善」:経理、関連部署、グループ、社外における役割や手順・ルールの見直し
「システム改善」:PC、IF(インターフェース)、システム改良、システム構築による対応
「適用ルール変更」:締日の変更、見積概算数値の適用
決算早期化の鍵:情報の早期入手
『情報を早期に入手する』ことが早期化達成のための最大の鍵
☑ 取引先からの請求書が遅く、伝票が起票できない!
☑ 経費提出の遅延により経費が確定できず、原価計算が回せない!
決算早期化の意外な落とし穴:承認や会議体待ち
☑ 管理者の承認待ちで、決算数値の確定が遅れる…
☑ 経営者への報告資料作成に時間がかかる…
☑ 決算発表までに通す会議体が多くて時間を要する…