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プロセス・タスクマイニング~DXによる内部監査部門の効率化・省力化~

2022年02月24日

 

企業におるDX化(デジタルトランスフォーメーション「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」流れ)が叫ばれる中、プロセス・タスクマイニングというツールをご存知でしょうか?
プロセス・タスクマイニングは、基幹システムやExcel等を利用した業務を可視化して、業務改善の促進やITシステムの評価ツールとして開発されたものになります。最近、このプロセス・タスクマイニングを内部監査へ活用しようとする試みがあり、DX化の流れと相まって注目されつつあります。内部監査は、業務経験や経理、労務、ITといった専門知識が求められる業務であり、非常に属人性の高いエリアと言えます。そのような内部監査においてもDX化の流れは迫ってきており、新たな内部監査の進め方としてプロセス・タスクマイニングの活用が注目されています。
今回は、プロセス・タスクマイニングの基礎から期待されるメリット、内部監査部門での活用可能性について考えてみます。

 

プロセス・タスクマイニングとは?

プロセス・タスクマイニングとは、基幹システムやパソコンの操作ログから業務プロセスを自動生成して可視化するツールです。正確にはプロセスマイニングとタスクマイニングの2つからなります。

 

‣プロセスマイニング…ERPやスクラッチ開発による基幹システムのシステムログから業務プロセスを分析するツール
‣タスクマイニング…パソコンで使用するExcel等のアプリケーションの操作ログから業務作業を分析するツール

 

この2つを組み合わせることにより、業務プロセスの可視化を実現し、ホワイトカラーの生産性を可視化することができます。例えば、SAPやsalesforceといった基幹システムを操作しつつExcelを使って作業する、またはExcelで作成したデータを基幹システムへ入力するというように、基幹システムとパソコンを組み合わせて進めていく業務は数多く存在します。そうした一連の作業を基幹システムとパソコンの両面から分析することで、通常とは異なる処理を検知し、異常な作業をチェックすることが可能になります。リモートワークや残業において、どのような作業にどれくらいの時間がかかっているのかといった分析から、属人化している業務、特定の担当者にしかできない作業や手順を調査するツールとして注目されています。

 

プロセスタスクマイニングは、業務の実態調査や課題の早期発見といった業務可視化・分析ツールとしての効果を発揮するとともに、ITシステム導入後の評価ツールとしても活用されています。

 

業務可視化・分析ツールとしてのプロセス・タスクマイニング

プロセス・タスクマイニングでは、業務プロセスに関連するKPI情報とパソコンに関する作業情報をモニタリングすることができます。プロセスマイニングでは、受注から入金までの一連のフローを自動生成して、プロセス件数やプロセス全体の所要時間、所要コスト、差し戻し件数といった情報を収集することが可能です。一方、タスクマイニングでは、パソコンで利用しているアプリケーションやファイル、作業時間等を収集し、パソコン上でどういった作業をしているのか可視化できます。

 

【プロセスマイニング情報】
・プロセス件数 ・プロセス全体の所要時間 ・プロセス全体の所要コスト ・標準プロセス ・逸脱プロセス ・差し戻し件数等
【タスクマイニング情報】
・利用中のアプリケーション ・WEBアクセス ・ファイル名 ・キーボード入力 ・作業時間 ・操作内容動画等

 

このKPI情報から、例えば、次のような業務プロセスやKPIが可視化され、業務改善の要否や改善に繋げるための各種施策の分析を行うことができます。
・標準から逸脱プロセス ・繰返しの多い作業 ・残業時間での作業 ・差し戻し申請数
・通常とは異なる異常な処理 ・リモートワーク中の業務作業 ・属人的な業務処理 ・過剰なリードタイム

 

プロセス・タスクマイニングの利用により、業務プロセスや個人タスクを可視化し、プロセスの件数や所要時間・コスト、個人の作業時間といったKPI情報を分析することが実現できます。

 

内部監査部門によくある課題

内部監査部門は、自社の部門や子会社等の業務をモニタリングするミッションを担っています。部門等が予め定められたルールやプロセスに準拠して業務を遂行しているか確認することが内部監査部門の仕事です。そのような内部監査部門の仕事の中で、よくある課題として挙げられるものがいくつかあり、ここでは4つの課題を紹介します。

 

【課題1】退職や異動により慢性的な人材不足に陥っている
内部監査部門は他の部署と比べても少人数で編成されていることが多く、限られた体制で監査を実施しなければなりません。また退職や異動により担当者が定着しないという悩みもあります。そのため、監査の範囲を制限する等の措置を行う企業も多いです。
【課題2】作業が多く、充分な時間をかけて監査できない
監査対象の拠点(国内・海外拠点)が多いと、往査の移動時間(海外への渡航時間等)もかかることから、全ての部署・子会社等を監査することができないのが現実です。このため、ローテンション監査やリモート監査に頼らざるを得ません。
【課題3】ノウハウや経験が無く、監査対象のことも知らない
監査体制を構築したばかりでノウハウが無い、監査対象となる部署・子会社の業務プロセスを把握していないといったケースもよくあります。例えば、海外子会社が放置されていて現状がわからないといった課題を抱える監査担当者も少なくありません。
【課題4】J-SOX3点セット作成の経験者がいない
IPOを目指している企業やITシステムのリプレイスを行う上場企業には、J-SOXの3点セットを作成した経験者がいないという課題もあります。J-SOXが施行されて10数年が経過し、J-SOX評価の経験はあっても構築の経験が無い担当者も多いのです。

 

どの企業でも内部監査部門のリソースに困っており、ノウハウや経験がないまま監査の対応を強いられているのが実情です。人的リソースの補完に努めるとともに内部監査の品質を高め、監査の対象範囲も拡大させていくことが望まれています。

 

プロセス・タスクマイニングによる課題解決の方向性

プロセス・タスクマイニングは業務可視化・分析ツールとして開発されたものですが、このツールを活用することで内部監査部門が抱える課題を解決できると期待されています。プロセス・タスクマイニングの活用により、監査範囲を拡大させるとともに作業負担を軽減することが可能になります。

 

【解決1】プロセス監査をITツールに代替させることができる
標準プロセスに準拠しているかどうか検証するプロセス監査をプロセスマイニングが代替し、ヒトは他の監査項目やテーマ別監査へ専念することができます。このため、プロセス監査の監視業務からは一部解放されて業務負担の軽減に繋がります。
【解決2】より多くの部門・子会社をモニタリング可能
ローテンション監査を廃止または5年から3年といったように間隔を短縮をすることができ、拠点への移動にかかる時間や費用を削減することが可能になります。ローテンション監査やリモート監査の強力な支援ツールとして活用することができます。
【解決3】監査対象拠点の業務プロセスを可視化
業務プロセスを可視化・モニタリングすることができるので、現場に出向かなくても監査対象の業務を熟知することが可能です。例えば、海外拠点の監査や初めて監査する拠点の業務を事前に把握できるというメリットがあります。
【解決4】システムログから業務フローチャートを自動生成
J-SOX内部統制報告制度においては3セットの作成・更新が必要になります。プロセスマイニングの活用により、システムログに基づく正確性の高いフローを作成することができ、また現場へのヒアリング工数を削減するといった作業負荷の軽減も期待できます。

 

このようにプロセス・タスクマイニングは、プロセス監査の範囲と実効性を高めるとともに、J-SOXにおける3点セット作成や見直しの際の省力化を期待できるツールと言えます。

 

内部監査におけるプロセス・タスクマイニング活用メリット

内部監査におけるプロセス・タスクマイニングの活用メリットは3つあります。プロセス・タスクマイニングは、内部監査における「アシュアランス」「モニタリング」「フォローアップ」の各領域において絶大な効果を発揮します。

 

◆アシュアランス
経営層にとって、会社が定めた業務プロセスに従わずに成果を上げられない事態は看過できないものであり、許しがたい行為です。期待した成果を上げるためには、会社が定めた標準プロセスへ準拠させる必要があり、それを保証する仕組みとして活用できます。
◆モニタリング
会社が定めたプロセスから逸脱した行為や不正誤謬に繋がる行為があれば、早期に検出して対応しなければなりません。また、常に業務プロセスを監視することにより、不正行為を躊躇し、不正を諦めさせることになるため、不正防止の効果としても期待できます。
◆フォローアップ
善意であっても標準プロセスとは異なるプロセスが検知されたら、即座に関係者へ情報を伝達し、改善を促すように指導する必要があります。客観性のあるログから業務を可視化し、証憑として利用できることから、根拠ある現場指導が可能になります。

 

プロセス・タスクマイニングは、内部監査の様々な局面で利用するメリットが高く、業務改善を促し、管理精度のレベルを引き上げるツールとして有用であると言えます。

 

【DXによる内部監査部門の効率化・省力化】
全ての業務エリアにおいてDX化の流れが押し寄せてきており、内部監査業務も例外ではありません。既存のITツールは、CATT(コンピューター利用監査技法)と呼ばれる大量データの検索・趨勢分析が主な目的となります。一方、プロセス・タスクマイニングは、業務プロセスを監視し、不正を防止・発見するツールとして注目されており、内部監査部門の業務を効率化させ、内部監査業務の省力化を強力に支援するツールとして期待されています。一度、内部監査部門での活用を検討してみてはいかがでしょうか?

まとめ

■プロセス・タスクマイニングとは?
プロセス・タスクマイニングは、基幹システムやパソコンの操作ログから業務プロセスを自動生成して可視化するツールである。
‣プロセスマイニング…ERPやスクラッチ開発による基幹システムのシステムログから業務プロセスを分析ツール
‣タスクマイニング…パソコンで使用するExcel等のアプリケーションの操作ログから業務作業を分析するツール
■業務可視化・分析ツールとしてのプロセス・タスクマイニング
プロセス・タスクマイニングの利用により、業務プロセスや個人タスクを可視化し、プロセスの件数や所要時間・コスト、個人の作業時間といったKPI情報を分析することを可能にする。
■内部監査部門によくある課題
【課題1】退職や異動により慢性的な人材不足に陥っている

【課題2】作業が多く、充分な時間をかけて監査できない
【課題3】ノウハウや経験が無く、監査対象のことも知らない

【課題4】J-SOX3点セット作成の経験者がいない
■プロセス・タスクマイニングによる課題解決の方向性
【解決1】プロセス監査をITツールに代替させることができる

【解決2】より多くの部門・子会社をモニタリング可能
【解決3】監査対象拠点の業務プロセスを可視化

【解決4】システムログから業務フローチャートを自動生成
■内部監査におけるプロセス・タスクマイニング活用メリット
プロセス・タスクマイニングは、業務プロセスを監視し、不正を防止・発見するツールとして最近注目されており、内部監査部門の業務を効率化させ、内部監査業務の省力化を強力に支援するツールとして期待されている。

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