企業には様々なシステムが存在しています。営業支援システム、顧客管理システム、販売管理システム、会計システム、勤怠管理システム、人事給与システムなど、主要なシステムだけでも数多くありますが、それぞれ永遠に使い続けることはできず、いつかは変えるときがやってきます。
新しいシステムの導入を検討するときには、RFI(情報提供依書)やRFP(提案依頼書)などの手段を用いて、システムを取り扱っているベンダーから情報を集め、提案をもらい、その内容を評価します。
ベンダー各社の提案内容やシステム自体の良し悪しを判断し、納得感のある評価結果を得るには、どのようにすれば良いのでしょうか。
今回は、その方法を整理してお伝えしていきたいと思います。
システム提案評価の悩みと解決の方向性
長年使い続けてきたシステムを変えようとする場合には、新システムの選定を行いますが、そのために複数のシステムベンダーへ自社の状況を伝え、システム提案をしてもらいます。
提案の依頼を受けたベンダーは提案書を作り、提案内容の説明(プレゼンテーション)とシステムの紹介(デモンストレーション)を行うことが一般的です。
そしてシステムを選定する側は、受領した提案書とプレゼンテーション・デモンストレーションを評価して、自社にとって最も良いと考えられる新システムを導き出します。
この「評価」のときによくある悩みが、提案評価の方法をどのように行うか、という点になります。
ベンダーからの提案を客観的に評価(恣意性を排除)し、比較をしやすくした上で、社内の誰にでも結果を説明できる方法を作り上げなければいけないからです。
その悩みを解消するには、評価を数値化して結果を定量的に表現する方法が有効です。
具体的な進め方は、次のとおりです。
①評価視点を決める
②評価項目を決める
③評価項目の配点を決める
④評価基準を決める
⑤評価の最終結果を比較する
次章から、それぞれの内容についてお伝えしていきます。
評価視点と評価項目を決める
提案評価の準備として、まず始めるべきなのは評価視点を決めることです。
評価視点とは、提案書やプレゼンテーション・デモンストレーションから得られる情報を
漏れなく評価するための切り口です。
最終的には、視点ごとにベンダー各社の評価点を集計して、比較を行います。
【評価視点(例)】
企業:ベンダーの財務状況や実績から、信用できる企業であるかを評価します。
提案:自社の事業内容や課題を理解した、適切な内容の提案であるかを評価します。
システム:提案システムは必要とする機能を備えているか、将来的な拡張性はあるかなどを評価します。
コスト:見積り金額は自社の予算感と合っているか、算出根拠は明確であるかなどを評価します。
評価視点を決めた後は、内訳である評価項目を検討します。
評価の担当者は、これらの項目ごとに評価を行っていきます。
【評価項目(例)】
企業の評価項目:財務体質に問題はないか。導入実績は何社か。
提案の評価項目:依頼内容を理解しているか。導入計画は適切か。プロジェクトリーダーの経験は充分か。
システムの評価項目:機能要件の網羅性はどの程度か。操作性は良いか。導入範囲外の機能は豊富か。
コストの評価項目:イニシャルコストやランニングコスト、予想されるバージョンアップ費用など。
評価項目の配点と評価基準を決める
続いて、評価視点と評価項目への配点を行っていきます。その際、自社がベンダーとシステムに対して特に期待していることを評価に反映させるため、重要と考える視点と項目は配点を多くします。
例えば、システムの視点を重視するならば、次のようにしておきます。
【評価視点の配点(例)】※100点満点の場合
企業:10点
提案:30点
システム:40点
コスト:20点
更にシステムの中で、操作性を重視するのであれば、次のようにします。
【評価項目の配点(例)】
(システム)
・機能要件の網羅性:10点
・システムの操作性:20点
・導入範囲外機能の豊富さ:10点
このようにしておくことで、評価結果を集計した際に優劣を判断しやくなります。
最後に評価基準の設定を行います。
評価基準とは、評価者が提案書やプレゼンテーション・デモンストレーションの可否を表現するためのものさしであり、一般的には3段階~5段階の中で選ばれることが多いです。
これを評価項目ごとに設定していきます。
【評価基準の設定(例)】※4段階評価
システムの操作性
1:初心者には難しそう
2:研修を受けても覚えるには時間がかかりそう
3:研修を受ければ操作ができそう
4:初心者でも簡単に操作ができそう
上記の評価項目の配点と評価基準値を組み合わせることにより、評価項目の点数が算出されます。
例えばシステムの操作性で2を選択した場合は、(配点)20点×(評価)2÷4段階=10点、です。
あらかじめ評価視点や項目の配点を決めている中で、評価者が各項目の評価基準値を選択することにより自動的に点数が決まるため、客観的な評価結果を得ることができるようになります。
評価した結果を比較する
評価方法の設定を終えましたら、実際に各ベンダーの評価を行い、結果を比較していきますが、進め方は以下のとおりです。
①評価者たちが評価基準を基に、ベンダーの提案書とプレゼンテーション・デモンストレーションを評価する。
②評価者同士で評価結果を持ち寄って協議し、評価項目ごとに最終的な評価基準値を選ぶ。
③決定した評価基準値を用いて、各ベンダー・システムごとに評価視点の点数を算出する。
④算出した評価点を比較し、発注先のベンダーを決定する。
ここでは3社のベンダーから提案を受けたとして、④の内容を説明します。
A社(合計70点):□企業・15点 □提案・20点 □システム・15点 □コスト・20点
B社(合計70点):□企業・25点 □提案・20点 □システム・10点 □コスト・15点
C社(合計45点):□企業・15点 □提案・10点 □システム・10点 □コスト・10点
評価の結果が上記になったとしますと、まず点数の合計が最も低いC社は落選となります。
A社とB社は同点ですが、重要視をするのは機能面だった場合、システムの視点で得点の高いA社が発注の第一候補である、という結論に至ります。
企業の視点に開きがあることが気になる場合は、再度、評価者たちで内容の確認と協議を行い、調整の末に発注先を決定します。
システム提案を評価する方法には、他にもいくつか種類があり、もっと簡便なものを選択するケースもありますが、このように評価を数値化して比較を行うようにすれば、どのベンダー・システムが優れていて、自分たちの望みや期待に応えてもらえそうであるかを、定量的に判断できることになります。
今回ご紹介した方法であれば、評価者の好みや個別の事情などによる恣意性を除いた、ロジカルな結果として納得感が得られるため、社内にも説明がしやすくなります。
まとめ
☑システム提案評価の悩みと解決の方向性
・システム提案評価時の悩みで多いのは、評価方法である。
・恣意性を排除し、社内に説明しやすい評価方法を検討しなければいけない。
・評価を数値化して、結果を定量的に表現する方法の進め方は次のとおり。
①評価視点を決める
②評価項目を決める
③評価項目の配点を決める
④評価基準を決める
⑤評価の最終結果を比較する
☑評価視点と評価項目を決める
・ベンダー評価の切り口となる評価視点を決める。
・評価視点を決めた後は、内訳である評価項目を検討する。
☑評価項目の配点と評価基準を決める
・評価視点と項目の配点を決める。
・重要視する視点や項目には配点を高く設定し、重みをつける。
・評価基準とは、提案内容の可否を測るものさしである。
・評価基準は一般的に3段階~5段階の中で設定することが多い。
・評価項目の配点と評価基準を組み合わせ、項目の点数を算出する。
☑評価した結果を比較する
・ベンダーごとに最終の評価点を算出し、合計点の高いベンダーを発注先の候補にする。
・合計が同点のベンダーがあれば、自社が重要視する項目の点数で判断する。
・今回紹介した方法であれば、評価者の恣意性を排除した結果を得ることができる。
・ロジカルな結果なので納得感が得られ、社内にも説明がしやすい。