『仕事の流れ』を関係者間で共有する、または共有しなければならない状況は、様々な場面で発生します。例えば、業務自動化・改善、システム導入(RPAの導入)、業務マニュアル・手順書の整備などです。
業務フロー図の目的は、『業務の流れを関係者間で共有できるようにする』ことです。業務フロー図を作ることにより、業務内容や課題、改善点などを関係者間で正確に共有することが可能になります。関係者間の認識がそろうことにより、議論の発散を防ぐといった効果もあります。
このように、様々な場面で必要とされる業務フロー図ですが、「分かり辛い」ものであれば、本来の目的を果たすことができません。
今回は、いかに分かりやすい業務フロー図をどのようにして作成するのか、そのポイントをご紹介します。
目次
業務自動化・効率化における業務フロー図の役割
業務自動化や改善といった取り組みを進めるうえで、「関係者の理解を得ることができない」といった問題が必ずと言っていいほどに発生します。例えば、
・ 問題点を説明したが伝わらなかった
・ 業務上の課題を議論したかったが、別の議論に変わってしまった
・ 改善案を出したが上司から反対された
・ 関係部署へ展開したが、理解を得ることができなかった
といったことです。このような問題は、関係者が業務に対して『共通認識』をもっていないということが原因で発生します。業務に対する共通認識がないので、問題点や解決案が有効なのか判断ができないのです。また、業務自動化や改善の取り組みでは、「現状の業務を変える」ことを嫌がる関係者が必ず現れます。
関係者の認識を揃えるうえで、業務フロー図を作成することは非常に有効な手段です。業務フロー図によって業務の流れを理解することができるだけでなく、課題や改善案を明記することで、それらの認識も共有化することが可能となるからです。
「業務フロー図は手間がかかるので作成したくない」という担当者もいらっしゃいますが、関係者とのやり取りにかかる工数を考えると、フロー図を作成したほうがよほど効率的です。このように、業務自動化や業務改善を進めるうえで、業務フロー図は非常に重要な役割を担っているのです。
わかりやすい業務フロー図の作成ポイント
業務フロー図の目的は、『業務の流れを関係者間で共有できるようにする』ことです。したがって、業務フロー図自体が、わかりやすいものでなければ、意味がありません。
わかりやすい業務フロー図を作成するには、いくつか気を付けなければならないポイントがあります。
1.開始と終了を明確に記載する
業務フロー図によっては、開始時点と終了時点が良く分からないものが存在します。開始と終了が明確でないと、どこから始め、どこで終わるのかが分からなくなり、結果として全体の流れが伝わらないといった事態に陥ります。
例えば、開始時点=〇、終了時点=●といった図形を決め、フロー図を作成すると分かりやすくなります。
2.関係者・関係組織を明らかにする
1つの業務が自部署または1人の担当者で完結するケースは非常に稀です。大概の業務は複数の部署または担当者にまたがって行われています。業務フロー図を作成するうえで関係者や関係部署を明確にしないと、誰が何をするのかが分からない図になってしまいます。
3.図形の種類を増やし過ぎない
業務フロー図には、様々な図形が使われます。例えば、業務プロセス、情報(紙)、情報(データ)、システム、とそれぞれ異なる図形を使うことが一般的です。しかし、使用する図形を増やし過ぎると何の図形が何を表しているのかが分からなくなり、結果的に複雑な図になってしまいます。
4.条件分岐を明確に表記する
業務フロー図によっては、条件分岐が記載されていないものもあります。しかし、条件分岐が明確でないとどのような条件・判断で次のプロセスに移るのか、分からなくなっていしまいます。しかし、あまり複雑な条件を記載すると、逆に分かり辛くなってしまいますので、重要な条件のみを記載し、細かい条件は省略したほうが良いです。
他にもポイントはありますが、まずはこの4つを気を付けることで、比較的にわかりやすい業務フロー図を作成することができます。業務フロー図を作成する際は、この4つのポイントを守ってみてください。
業務フロー図の作成方法~記号の使い方~
業務フロー図を作成する際、正確に表現しようとするあまり、いろいろな図形を使ってみたくなります。業務フローを正確に表現するには、様々な図形を使わなければなりませんが、図形の種類を増やしすぎるとかえって分かりづらい業務フロー図になってしまいます。
わかりやすい業務フロー図を作成するには、最低限の図形のみで構成したほうが良いです。
このように、5つの図形+開始(〇)・終了(●)のみで作成すると、非常にシンプルで第三者にも理解しやすい業務フロー図を作成することができます。
業務フロー図の作成方法~作業レベルを統一する~
わかりづらい業務フロー図の特徴として、『作業レベルがバラバラ』という問題があります。1つの業務フロー図の中に、「詳細な作業」と「粗い作業」がそれぞれ含まれていると、読み手はどこを見るべきが迷ってしまいます。
自分が担当している業務のフロー図を作成する場合、自分の知っている作業は細かく記載し、あまり自分が知らない業務(関係者・関係部署の業務)は粗く書いていしまうという傾向があります。もちろん、自分の作業だけを共有したいのであれば、その部分だけを細かく記載すればよいのですが、業務自動化・改善などで業務フロー図を使う場合、問題の原因が関係者や関係部署に存在することがあります。このような場合、自分の担当範囲だけ細かく記載すると、その部分だけ集中的に議論に取り上げられり、原因が存在するはずの関係者・関係部門の作業には話が及ばないといった事になりかねません。
したがって、1つの業務フロー図に記載する作業のレベルは、できる限り均一にする必要があります。
業務フロー図の作成方法~プロセス・インプット・アウトプットを整理する~
業務フロー図を作成する際、『作業』はどのようにして整理したらよいのでしょうか?『作業(=プロセス)』は、基本的にインプットとアウトプットが伴います。インプットとなる情報やモノがあり、その情報を用いて作業(プロセス)が行われ、作業の結果としてアウトプット(情報やモノ)が生み出されます。例えば、「請求書の作成」という作業をインプット、プロセス、アウトプットの単位で見ていくと以下のようになります。
インプット: | 売上情報 |
プロセス: | 請求書の作成 |
アウトプット: | 請求書 |
前の作業のアウトプットが、次の作業のインプットとなり、次の作業のアウトプットがその次の作業のインプットとなりますので、全ての業務は基本的に『インプット』→『プロセス』→『アウトプット(次の作業のインプット)』→『プロセス』・・・といった形で流れていきます。
業務フロー図に記載した作業で、もしこのインプットやアウトプットが明確でない場合は、恐らくフロー図に書くべき作業ではないはずです。業務フロー図に書くべき作業が分からなくなってしまった場合は、一度インプットとアウトプットの視点から整理してみると良いでしょう。
まとめ
・業務自動化・効率化における業務フロー図の役割
☑ 関係者に対して業務や課題の『共通認識』をもってもらう。
☑ 業務フロー図の作成は手間がかかるが、関係者との調整の時間を踏まえると作成したほうが効率的。
・わかりやすい業務フロー図の作成ポイント
☑ 開始時点と終了時点、関係者と関係組織を明確に表記する
☑ 図形の種類を増やしすぎず、条件分岐をシンプルに記載する。
・業務フロー図の作成方法
☑ 業務フロー図に記載する作業のレベルを統一する。
☑ プロセス(作業)と、それに関係するインプット情報、アウトプット情報を整理する。
なお、業務自動化については、以下のブログをご参照ください。
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