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実務で使える!全社的な決算・財務報告プロセスに係る統制の評価マニュアル

2018年06月28日

 

決算・財務報告プロセスに係る統制は、経理・決算作業に係るもので専門的であり、どこまで評価してよいかわからないというお声をよく聞きます。
ルールがある事、ルール通りに運用されている点を評価するという点では、他の統制と同じで難しくありません。
決算・財務報告プロセスに係る統制は、全社的な観点で評価するものと、個別の観点で評価するものとに分かれているのが特徴です。
そのうち今回は、全社的な観点で評価する統制(以下決算統制(全社))の実務的な評価手続きについて、わかりやすく説明します。

 


決算統制(全社)の評価とは

決算統制(全社)は、経理・決算業務全体を包んでいる統制となり、会計方針策定、経理・決算承認権限等があります。そして決算統制(全社)の評価とは、こういった統制がルールとして存在し、ルール通りに運用されているか規程や証憑を収集し、確認する事です。
決算統制(全社)は、一般的には全般的事項、単体決算、連結決算および開示等のサブプロセスに分かれて評価するものであり、それぞれの評価手続きについて説明を行います。

 

 

全般的事項の評価手続きについて

はじめに全般的事項の評価手続きについて解説します。
全般的事項における統制とは、会計方針、職務分掌、人材配置等、決算業務全体に係る方針、体制の事であり、それぞれの評価手続きは以下の通りです。

 

◆会計方針
「グループ会社会計方針」を閲覧し、グループで共通の会計方針を選択、摘要するルールになっている事を確認する。

 

◆職務分掌
「会計伝票」を閲覧し、仕訳作成担当者とは別の承認者が承認(押印)している事を確認する。

 

◆人材配置
「職務能力要件」を閲覧し、財務諸表作成能力を定義している事を確認する。

 

全般的事項は、決算統制(全社)の中での根幹となり、財務諸表を誤るリスクを下支えしている縁の下の力持ちのような存在といえるでしょう。

 

 

単体決算プロセスの評価手続きについて

続いて、単体決算プロセスの評価手続きを見ていきます。
単体決算プロセスにおける統制とは、勘定科目の整備、勘定残高の検証、決算修正仕訳承認等、通常の決算処理に係る統制の事であり、評価手続きは以下の通りです。

 

◆勘定科目の整備
「勘定科目一覧」を閲覧し、勘定科目をグループで共通化し、子会社へ周知している事を確認する。

 

◆勘定残高の検証
「単体前期比較資料」を閲覧し、勘定科目の異常な増減については増減理由を記載・検証している事、経理課長が承認(押印)している事を確認する。

 

◆決算修正仕訳承認
「決算マニュアル」を閲覧し、決算処理作業内容や経理課長が承認する旨が定められている事を確認する。
「会計伝票」「計算資料」を閲覧し、金額等が一致し、経理課長が承認(押印)している事を確認する。

 

以上が単体決算プロセスにおける評価手続きとなります。
単体決算プロセスにおける業務は日常の経理・決算業務であり、定型的な業務である事が多いのが特徴です。
定型的な業務であるからこそ、ルールをマニュアル化し、決算処理に誤りがないようにしていく必要があります。

 

 

 

連結決算および開示プロセスの評価手続きについて

最後に、連結決算および開示プロセスの評価手続きの解説を行います。
内部統制は連結ベースで評価を行う必要があり、必然的に連結決算プロセスが重要になります。
また上場企業の義務である内部統制評価において、開示プロセスの評価は欠かせません。

 

連結決算から開示までは、以下のプロセスに分けられます。
①親会社による必要情報の検討および各社への依頼
②各社における連結パッケージの作成
③親会社における連結財務諸表の作成
④親会社における開示情報の作成

 

連結決算から開示までは、プロセスの内容が分かりづらいため、まずはプロセス概要をお伝えします。その後それぞれの評価手続き例は、以下の通りです。

 

①親会社による必要情報の検討および各社への依頼
(プロセスの概要)
親会社にて連結財務諸表や開示情報を作成するために各社から収集すべき資料を連結パッケージにまとめ、各社へ送付する。
(評価手続き)
「連結パッケージの説明を行った会議議事録」を閲覧し、法令改正等があった場合は親会社は各社へ改定内容を説明している事を確認する。

 

②各社における連結パッケージの作成
(プロセスの概要)
各社は各部門から収集した基礎資料を基に、連結パッケージを作成し、親会社へ提出する。
(評価手続き)
「連結パッケージ」「基礎資料」を閲覧し、経理課長が内容の整合性を確認し、承認(押印) している事を確認する。

 

③親会社における連結財務諸表の作成
(プロセスの概要)
親会社では各社から回収した連結パッケージを基に、正確性等を前期比較等により確認し、連結システムへパッケージの内容を入力する。修正仕訳等を連結システムへ入力後、連結財務諸表を作成する。
(評価手続き)
「修正仕訳」の前期、当期分を閲覧し、経理課長は、仕訳を確認し、承認(押印)している事を確認する。

④親会社における開示情報の作成
(プロセスの概要)
各社から収集した連結パッケージを集計し、開示情報を作成する。開示項目ごとに前期開示との比較分析を行う。
(評価手続き)
「開示項目チェック表」を閲覧し、開示項目ごとに定められた承認者は、開示内容を確認し、承認(押印)している事を確認する。

 

以上が連結決算および開示プロセスにおけるプロセス概要および評価手続き例のお話しです。
連結決算プロセスでは、連結ベースで会計方針策定や決算作業の整備を行う事が一般的になっています。
連結決算作業においては、より専門的な知識が必要となり作業が属人的になりやすいため、財務諸表を誤るリスクが高いプロセスです。また内部統制の評価者にとっても、より数値の検証が難しいプロセスと言えるでしょう。
内部統制の評価者は、評価を通じて、問題点を発見し、経理部による連結パッケージの各社への説明、連結作業のダブルチェック体制の確立等を手助けする事により、連結決算プロセスにおけるリスクをより防ぐ事ができます。

 

 

 

 

まとめ

決算統制(全社)の評価とは
会計方針策定、経理・決算承認権限等の統制がルールとして存在し、ルール通りに運用されているかを確認

 

全般的事項の評価手続きについて
全般的事項における統制とは、会計方針、職務分掌、人材配置等
決算統制(全社)の中での根幹となり、財務諸表を誤るリスクを下支えしている統制

 

評価手続き例
◆会計方針
「グループ会社会計方針」を閲覧し、グループで共通の会計方針を選択、摘要するルールになっている事を確認

 

◆職務分掌
「会計伝票」を閲覧し、仕訳作成担当者とは別の承認者が承認(押印)している事を確認

 

◆人材配置
「職務能力要件」を閲覧し、財務諸表作成能力を定義している事を確認

 

単体決算プロセスの評価手続きについて
単体決算プロセスにおける統制とは、勘定科目の整備、勘定残高の検証、決算修正仕訳承認等
定型的な経理・決算業務であるためルールをマニュアル化し、決算処理に誤りがないようにする事が重要

 

評価手続き例
◆勘定科目の整備
「勘定科目一覧」を閲覧し、勘定科目をグループで共通化し、子会社へ周知している事を確認

 

◆勘定残高の検証
「単体前期比較資料」を閲覧し、勘定科目の異常な増減については増減理由を記載し、検証している事、経理課長が承認(押印)している事を確認

 

◆決算修正仕訳承認
「決算マニュアル」を閲覧し、決算処理作業内容や経理課長が承認する旨が定められている事を確認
「会計伝票」「計算資料」を閲覧し、金額等が一致し、経理課長が承認(押印)している事を確認

 

連結決算および開示プロセスの評価手続きについて
評価手続き例
①親会社による必要情報の検討および各社への依頼
「連結パッケージの説明を行った会議議事録」を閲覧し、法令改正等があった場合は親会社は各社へ改定内容を説明している事を確認

 

②各社における連結パッケージの作成
「連結パッケージ」「基礎資料」を閲覧し、経理課長が内容の整合性を確認し、承認(押印)している事を確認

 

③親会社における連結財務諸表の作成
「修正仕訳」の前期、当期分を閲覧し、経理課長は、仕訳を確認し、承認(押印)している事を確認

 

④親会社における開示情報の作成
「開示項目チェック表」を閲覧し、開示項目ごとに定められた承認者は、開示内容を確認し、承認(押印)している事を確認

 

連結決算プロセスでは、連結ベースで会計方針策定や決算作業の整備を行う事が必要

 

内部統制の評価者は、評価を通じて、問題点を発見し、経理部による連結パッケージの各社への説明、連結作業のダブルチェック体制の確立等を手助けする事により、連結決算プロセスにおけるリスクを防ぐ

 

 

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