国内でRPAを取り扱うベンダーは30社を超え、RPAを導入して運用を進める企業も多くあり、その中には様々な業務を自動化して実際の効果を得られている企業も存在しています。しかし一方ではRPAに対する利用者側の知識や技術が充分ではなく、あまり有効活用できていない企業も少なくありません。
今回はRPAを活用するためのポイントをイメージしていただくため、改めてRPAの持つ特長や適用の条件・対応する業務をお伝えした上で、実際の導入事例をご紹介していきます。
RPAの特長
RPAとはロボティック・プロセス・オートメーションの略で、パソコンの中で行う定型業務を自動化して実行することのできるアプリケーションソフトウェアです。RPAの主な特長は4つあります。
■長時間の稼働が稼働である
RPAはアプリケーションであるため、人間とは異なり24時間365日連続して動作させることが可能です。勤務時間外も含めて業務を設計することが可能となります。
■人間と比べて処理スピードが高速である
RPAは人間と比較して、およそ10倍から50倍の速度で作業を実施することが可能です。Excelの一覧表にあるデータを他システムの入力画面に転記するなど、人間が5分かかる作業であればRPAは5秒から10秒程度で済ませることができます。
■作業の正確性が高い
RPAは人間があらかじめ登録した動作を忠実に再現するため、人間のようなケアレスミスを起こすことがありません。そのため、高い業務品質を維持することが可能です。
■情報漏洩を防ぐことができる
業務の中には機密性の高い情報を扱うこともあり、人間であれば大切な情報を外部に漏らしてしまうリスクを抱えています。しかしRPAはアプリケーションとして作業を繰り返し実行する特性がありますので、誤操作やミスによる情報漏洩が発生する可能性はありません。
RPAは人間が決めたルールに従って指示された動作を繰り返し、判断ミスを起こすこともありませんので、大量の反復作業であっても人間が実行するよりも速く正確に行うことができることが特長となります。
RPAの適用条件
RPAを社内業務で活用するためには、RPAに適した条件を持つ作業で使うことが重要です。RPAはパソコン外の作業は適さず、人間のようにケースバイケースで作業を判断することもできません。RPAが効果を発揮できる条件や対応作業は次のようなものになります。
【RPAの適用条件】
①例外的な判断を要さない業務
RPAは特定の条件で作業を分岐させることが可能ですが、定められた条件以外の例外的な判断は行うことができません。
②音声認識を介さない業務
人間同士の会話や電話を使いながら進める等、パソコン外で発生する情報を基にした業務は行うことができません。
③紙媒体を扱わない業務
印刷資料からデータを入力したり、手書きのメモを書き起こす等のパソコン外にある情報を基にする作業を行うことはできません。
④作業量が膨大な定型業務
パソコンの中にあるデータを決められた条件に基づき、定型的に処理をする作業であれば、大量であっても人間より正確に実行することができるため、RPAに適しています。
【RPAが対応可能な作業】
①パソコンで処理可能な情報取得
②データの検証作業
③レポート作成
④システム間のデータ入出力作業
RPAが効果を発揮するのは、曖昧な判断を必要とせず繰り返し同じ作業を行うケースです。パソコン内の作業であれば、RPAを使った効率化が可能です。なお、RPAだけで紙を取り扱うことはできませんが、AI-OCR(PDF等の画像から文字を認識し、テキストに変換するシステム)とRPAを組み合わせることで自動化できる場合があります。
RPAの活用事例~小売業
小売業では毎日のように商品別や客層別等に売上動向を把握する必要があり、社内用のレポートを作成する業務も多くあります。ここではレポート作成と報告業務をRPAで自動化している企業の事例をご紹介します。
今まで作業は人間が手動で行っており、他の業務が多忙であっても定刻には作業をしなければなりませんでしたが、RPAによって業務自体を削減できています。
RPAの活用事例~製造業
製造業では売上や原価等の財務的な数値の集計の他にも営業部門や生産部門が管理しているKPI(重要業績指標)を管理している場合もあります。現場が独自に管理してる資料から専用システムへ登録する事例をご紹介します。
各部門のKPIは職種によって異なり、実績ファイルのフォーマットも違っているため、収集から入力まで作業は煩雑になっていましたが、RPAでメールの受信からシステム入力までを一貫して自動化して、月末業務の一部を短縮することができています。
RPAを有効活用するには
RPAを導入して業務の自動化や効率化を達成するためには、RPAの特性を理解して適切な作業を担当させることが大切です。判断を要する作業やパソコン外の作業も含めた業務をRPAに任せようとすると無理が生じますので、RPAの効果を最大限に得るためには、次の作業領域に着目して自動化対象業務を選択することが良いと考えます。
①データの検索作業
RPAが動作するパソコンやアクセス可能な社内ネットワーク上にあるデータ、インターネットブラウザを利用してアクセスできる外部サイトから情報を探す。
②データの転記作業
異なるファイル間におけるデータの転記や外部サイトから取得したデータをファイルに転記する。
③データの加工作業
一定の条件に基づいてデータの集計・加工を行う。
④システム操作
社内システムにログインし、各種の操作を行う。
上記の作業領域を含み、条件が明確でボリュームの大きい定型作業があれば自動化対象として捉え、RPAと人間の作業分担も考慮しながら業務設計とRPA設定を進めることが、RPAを有効活用するポイントになります。
まとめ
■RPAの特長
・長時間の稼働が可能である
・処理スピードが高速である
・作業の正確性が高い
・情報漏洩を防ぐことができる
■RPAの適用条件
・例外的な判断を要さない業務や音声認識を介さない業務はRPAに向かない
・RPAには作業量が膨大な定型業務が合う
・RPAが対応可能な作業はパソコンで処理可能な情報取得、データの検証作業、レポート作成、システム間のデータ入出力作業である
■RPAの活用事例~小売業
・Webシステムから売上等のデータを取得する
・データをExcelに転記し、報告用に加工する
・部門長へ集計結果をメールで報告する
■RPAの活用事例~製造業
・部門からKPIの実績データをメールで受領する
・データを集計用のExcelに転記し、差異があればアラートメールを送信する
・予算管理システムにログインし、集計データを入力する
■RPAを有効活用するには
・RPAの特性を理解して適切な作業を担当させることが大切になる
・次の作業領域に着目して自動化対象業務を選択することが良い
・データの検索作業、データの転記作業、データの加工作業、システム操作
・RPAと人間の作業分担も考慮しながら業務設計とRPA設定を進めること有効活用するポイントになる