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会計システムのリプレイスで注意すべきこととは?~会計システムに求める要件~

2021年05月13日

 

システムやハードウェアの保守が終了、法制度への対応、企業規模の拡大などの原因によって数年に1回は訪れるシステムリプレイスですが、会計システムの場合は他のシステムと比べて少し特殊です。販売管理システムであれば言わずもがな「販売取引」に特化したシステムになりますが、会計システムの場合、仕訳の入力や決算書の作成といった主要業務のほか、入金や支払といった業務もあり、システムによってそのカバーする領域は異なります。また、会計システムは全てのシステムの最下層に位置していますので、多くのデータ連携が求められます。さらに、会計システムがカバーする経理業務は、領収書や伝票などといった『紙』を扱うことが多くあり、リモートワークが推奨される昨今では、ペーパーレス化の要件なども必要になります。
今回は、『会計システム』のリプレイス・選定において、注視すべき要件をご紹介します。

 


『会計』の範囲~どこまでを会計システムで担うのか~

会計システムがカバーする経理業務は、日々の取引を記録する仕訳入力と決算書の作成が主要な業務となりますが、他にも事業別・部門別・商品別分析などといったセグメント管理や、売掛金や買掛金などの債権債務管理、予算管理などといった業務も担っています。世の中に出回っている会計システムで、仕訳入力と決算書の作成業務に対応していないシステムはありません。会計システムによって違いがでてくるのは、セグメント管理や債権管理、債務管理、予算管理、固定資産管理といった業務領域への対応です。

 

■セグメント管理
事業、部門、地域、商品、製品、プロジェクトといった視点で予算と実績を分析する業務です。

 

■債権管理
取引先からの入金をもとに売掛金を消し込み、取引先ごとの債権残高(売掛金や未収入金など)や滞留債権を管理します。

 

■債務管理
買掛金や未払金がいくら存在し、いつまでに支払うのかといった債務情報を管理するとともに支払処理を行います。

 

■予算管理
予算を作成するだけでなく、予算と実績を比較し、達成具合を管理したり、見込みといった予測などといったことも行います。

 

■固定資産管理
土地や建物、車、機械などといった固定資産を管理し、減価償却の計算や償却資産税の申告などを実施します。

 

小規模な会計システムでは、仕訳入力~決算書の作成のみの機能となることが多いですが、ERPパッケージなど大規模な会計システムはセグメント管理、債権管理、債務管理、予算管理、固定資産管理といった業務領域までカバーするものが存在しますので、会計システムを選定する際はカバーする範囲に注意する必要があります。

 

 

会計システムに求める要件①セグメント・財務・予算・固定資産管理

ERPパッケージといった比較的大規模な会計システムでは、セグメント管理、財務(債権債務管理)、予算管理、固定資産管理などといった経理業務の領域までシステムで対応できるようになっています。一方で、このような業務領域に特化した専門のシステムも多く存在します。専門のシステムは、業務をサポートする機能が充実していますので、業務の正確性や迅速性といった要件を満たすことができます。ERPパッケージも同じ業務領域をカバーしていますが、専門のシステムと比べると機能はいささか劣ってしまう傾向にあります。それぞれの業務において専門システムが持つ主要な機能は以下の通りです。

 

■管理会計システム
予算と実績の対比・分析や、セグメント分析など、経営戦略・経営方針に役立つ情報を管理するシステムです。管理会計に特化したシステムでは、商品×地域や、事業×地域×顧客といった多軸分析の機能やレポート機能も充実しています。

 

■債権管理システム
取引先からの入金情報(FBデータ)を銀行から取得し、売掛金を消し込み、取引先ごとの債権残高を管理します。入金データと債権データをマッチングし、自動で消し込む機能もあります。

 

■債務管理システム
買掛金などの支払データを支払期日ごとにまとめ、支払処理(振込指示)を行います。同一の支払先に対する支払データを名寄せしてまとめたり、支払期日の調整などを行う機能があります。

 

■固定資産管理システム
固定資産を管理するだけなく、建設仮勘定やリース資産、資産除去債務を管理する機能があります。また、減損会計や償却資産税の申告機能をもつシステムもあります。

 

このように、専門システムは業務をサポートする機能が充実していますので、どこまでを会計システムで処理し、どの業務を専門システムで対応するか検討が必要です。

 

会計システムに求める要件②データ連携

会計システムは、金銭にまつわる全ての取引を記録する役割を担っていますので、必然的に全てのシステムの最下流に位置しています。例えば、商品を販売したとして、その取引内容を販売管理システムに入力します。その取引情報は、販売管理システムから会計システムに連携され、仕訳として会計システムに記録されます。同じように、材料を仕入れた場合、調達管理システムに入力した取引情報は、会計システムに連携されて仕訳として記帳されます。
このように、様々なシステムから会計システムにデータが流れていきますので、会計システムをリプレイスする際は、データ連携に注意する必要があります。また、マスタ情報も連携ができないと、会計システム上でマスタメンテナンス作業が必要になってしまいますので、連携できるマスタの種類も明らかにしなければなりません。

 

■連携対象データ
多くの会計システムが、データ取り込みに対応していますが、取り込むデータの項目やフォーマットはシステムによって異なります。例えば、各データの長さが決まっている固定長、データがカンマで区切られているカンマ区切りといった違いがあります。また、仕訳そのもののデータも、1行で借方科目と貸方科目をセット(1行=1伝票)したり、借方科目と貸方科目を別の行にセットするなど、システムによって千差万別です。

 

■連携対象マスタ
会計システムに求めるセグメント管理の内容にもよりますが、代表的なマスタとしては以下のようなものがあります。
組織情報:部門コード、部門名称といった情報
取引先情報:取引先コード、取引先名、口座情報、支払/入金締め日などといった情報
社員情報:社員番号、社員名称、口座情報(交通費や経費の支払口座)

 

会計システムに連携されるデータやマスタは、他のシステムと比べて圧倒的に多いということが言えます。会計システムへの連携ができないと、手作業が多く発生してしまいますので注意が必要です。

 

 

会計システムに求める要件③ペーパーレス化

経理業務は、数ある業務の中でも領収書や請求書、伝票などといった紙の書類が多いという特色があります。しかし、昨今では新型コロナウィルス感染症対策としてテレワークの普及が促されていますので、業務上で扱う紙の書類を無くさない限り、テレワークを実現することはできません。
経理業務でペーパーレス化を進める場合、「何でもかんでもPDFにして保存すればよい」というわけにはいきません。特に税法上で保存が義務付けられている紙の書類を電子保存する場合、『電子帳簿保存法』という法律の要件を満たさなければならないのです。電子帳簿保存法で認められている電子データの保存方法は3種類あります。

 

①電子データでの保存
PCで作成した各種書類を印刷せずにサーバーなどに保存する方法。

 

②マイクロフィルムでの保存
PCで作成した各種書類をCOMと呼ばれる「電子計算機出力マイクロフィルム」を使って写真フィルムで資料を保管する方法。

 

③スキャナでの保存
紙の書類をスキャンしてデータに変換し、保存する方法。スマートフォンなどの端末で撮影したデータも使用可能。

 

会計システムが電子帳簿保存法に対応している場合、取引先から受領したPDFの請求書をそのまま格納するといったことも可能になります。また、電子承認といった機能があれば、捺印自体も不要になりますので、テレワーク環境の実現が容易になります。

 

このように、会計システムをリプレイスする際は、単純に既存システムの範囲での置き換えではなく、セグメント管理や債権債務管理といった業務や、データ・マスタ連携、電子帳簿保存法といった要件にも目を向けたほうが良いです。

 

 

まとめ

■『会計』の範囲~どこまでを会計システムで担うのか~
・経理業務は、仕訳入力と決算書の作成が主要な業務となるが、他にもセグメント・債権・債務管理などといった業務も担っている。
・小規模な会計システムでは、仕訳入力・決算書の作成のみの機能となることが多いが、ERPパッケージはセグメント管理、債権管理、債務管理、予算管理、固定資産管理といった業務領域までカバーするものが存在する。

 

■会計システムに求める要件①セグメント・財務・予算・固定資産管理
・セグメント・債権・債務・予算・固定資産などといった経理業務の領域に特化した専門のシステムが多く存在する。
・専門のシステムは、業務をサポートする機能が充実しており、業務の正確性や迅速性といった要件を満たすことができる。
・専門システムは業務をサポートする機能が充実していますので、どこまでを会計システムで処理し、どの業務を専門システムで対応するか検討が必要。

 

■会計システムに求める要件②データ連携
・様々なシステムから会計システムにデータが流れてくるため、会計システムをリプレイスする際は、データ連携に注意する必要がある。
・マスタ情報の連携ができないと、会計システム上でマスタメンテナンス作業が必要になるため、連携できるマスタの種類も明らかにしなければならない。

 

■会計システムに求める要件③ペーパーレス化
・紙の書類を電子保存する場合、『電子帳簿保存法』の要件を満たさなければならない。
・電子帳簿保存法で認められている電子データの保存方法は、「電子データでの保存」、「マイクロフィルムでの保存」、「スキャナでの保存」の3種類。

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