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販売・生産管理システム導入の勘所~基本機能と生産形態による違い~

2017年12月14日

 

最近はパッケージシステムの活用が当たり前になってきましたが、パッケージシステムが使われ易い人事給与や会計業務以外の業務領域はスクラッチ開発のシステムである、という企業もまだまだ多いようです。

 

販売業務・生産業務は企業独自の考え方やルールも多く、スクラッチ開発の方が適応しやすい、と言えます。

 

ですが、コストを考えると、スクラッチ開発よりもパッケージシステムのほうがメリットが高く、パッケージシステムへの切替を検討している、という企業も以前に比べれば増えているように感じます。

 

今回は、製造業を前提に、販売・生産管理パッケージシステムの機能を整理していきます。

 


販売・生産管理システムとは

販売・生産管理システムとは、製造業において、受注から出荷、原価計上までの一連の業務を管理するためのシステムです。
システム毎にカバー領域に違いはありますが、以下の様な業務領域をカバーしていることが一般的です。
・原材料を調達するための調達管理
・原材料や製品の移動、棚卸を管理するための在庫管理
・生産実績に基づいて製品原価を計算するための原価計算

 

これらの領域をカバーすることで、物とお金を一元管理できる、というのが販売・生産管理システム導入のメリットと言えます。

 

販売・生産管理システムの基本的な機能とは

それでは、製造業向けの販売・生産管理システムの機能について少し具体的に見ていきたいと思います。

 

販売管理
見積から、受注、出荷、売上計上などの業務をカバーします。
<機能例>
・見積書の作成
・得意先から受注登録及び製品の手配(引当、生産指示、出荷指示)
・出荷指示に基づく製品出荷及び納品書の発行
・出荷又は得意先の検収を踏まえた売上計上
・売上に基づく請求書の発行

 

生産管理
生産計画から、生産指示、生産実績などを管理します。
<機能例>
・製品構成(BOM、レシピ等)の登録
・生産計画の策定
・生産計画や受注に基づく生産の指示
・生産の進捗状況登録
・生産実績の登録

 

調達管理
生産計画や生産指示を踏まえて、必要な原材料の発注・仕入を行います。
<機能例>
・見積依頼の作成及び見積回答の登録
・発注登録及び注文書の発行
・原材料の入庫・検品
・検収結果を踏まえた仕入計上

 

在庫管理
原材料や製品の入出庫や棚卸といった業務をカバーします。
<機能例>
・原材料や製品の入庫及び出庫登録
・棚卸計画の作成及び棚卸実績の登録
・原材料や製品の倉庫間移動
・原材料や製品の評価(低価法対応を含む)

 

原価管理
製品の原価計算業務に対応します。
<機能例>
・生産実績に基づく実際原価計算
・生産実績に基づく標準原価計算及び原価差異分析
・製品別損益分析

 

以上のように、販売・生産管理システムは、製造業における販売、調達、在庫、生産、原価といった、企業の根幹となる業務をカバーすることができるものとなります。

 

 

 

生産形態により販売・生産管理システムはどう変わるのか

一口に製造業と言っても、製造する物や製造工程、製造に至るまでのプロセスは、企業毎に異なります。
システム導入の際も、その違いを無視することはできません。
パッケージシステムを採用の際は、自社の業種・生産形態に適したものを選ぶのが成功への近道となります。
ここでは、生産形態によって、システムの機能がどう変わるのか、という点について整理します。

 

①受注生産と見込生産
大きくは受注生産と見込生産(需要予測に基づいて生産)があります。
受注生産の場合は、「受注→生産指示→生産→出荷→売上」というフローになりますが、見込生産の企業の場合は、「受注→引当→出荷指示→出荷→売上」というフローになります。
このように、処理フローに大きな違いがありますので、システム導入の際には、自社の処理フローに適応できるかどうかを確認することが重要です。

 

どちらにも対応しているパッケージシステムも多く存在していますが、その場合でも、受注生産時には機能Aが使えない、といったことがよくあります。
各機能がどちらの生産形態に対応したものかを見極めたうえで、適否を判断する必要があります。

 

②注文品と規格品
注文ごとに仕様が異なるか否かでも大きな違いが生じます。
前者の場合は、販売・生産プロセスにおいて、設計・見積業務が重要なウェートを占めます。システムで設計・見積の情報を保持し、それに基づいた実績管理が求められることが多いです。
更には、船舶や重機など、生産期間が長期にわたるものについては、設計・見積をベースに、工事進行基準による売上・原価計上が必要になる場合もあります。

 

③生産ライン
製品ごとに工場や生産ラインが異なるか否かも一つのポイントとなります。
例えば、Aという製品を生産するのはBラインだけ、と決まっていれば、そこに判断は必要ありません。
そうではなく、Aという製品を生産できるのは、C工場のDライン、Eライン、F工場のGラインといった具合に複数のラインが考えられる場合は、生産指示の際にラインを指定する、という作業が必要となります。
ライン指定は、ラインの稼働状況や納品場所までの距離など、様々な要素が絡むため、作業の負担になることも多く、ぜひシステム化したい、という声が上がる領域でもあります。
(別途、生産スケジュール用システムを導入して対応する、という選択肢もあります。)

 

 

販売・生産管理パッケージシステム検討時の注意点

最後に、販売・生産管理パッケージシステムを検討する際の注意点について、整理します。
費用対効果の高いシステムを導入するためには、以下のような点を考慮しておきたいです。

 

①自社の生産形態に合ったシステムを選ぶ
前章で説明したように、生産形態に応じて必要となる機能が異なります。
自社の特徴を踏まえて、それに適したシステムを選ぶことが重要です。
様々な生産形態に対応したシステム、をうたい文句にしている製品もありますが、そのような製品にも得手不得手がある事が少なくありません。
各種マスタの構造や関係性(例えば工場マスタと部門マスタの上下関係、ラインと製品の上下関係等)自社の生産形態に合っているかをという視点でチェックする必要があります。

 

②ユーザー帳票作成機能やデータ出力機能を活用する
業務を遂行するにあたっては、様々な帳票が必要となります。
ですが、帳票の増加は、開発工数の増加を招き、コストも膨らみます。
最近のパッケージシステムはユーザー帳票作成機能や汎用データ出力機能を有するものも多数あります。
これらの機能を理解し、これらの機能を活用することができれば、コストの抑制が可能となります。

 

③パッケージの標準機能に合わせる
システム導入に携わっていると、既存業務に拘りがあり変更できない、という意見を聞くことが多くあります。
ですが、“拘り”はシステム導入費用の増加を招く一因です。
パッケージシステムに合わせて業務を変えることができれば、システム投資費用の抑制も可能になります。

 

新システムを導入するとなると、決して安くはない金額を投資することになります。
高い金額を投入するのであれば、現システム課題もできるだけ解消したい、と考えてしまいがちですが、多くの要望を実現しようとするとコストが膨らみ、パッケージシステムでコストを抑える、という当初の狙いが実現できない恐れがあります。
上記の点を、システム導入のコアメンバーだけではなく、ユーザー部門の方々にも理解していただくことが、費用対効果の高いシステムを導入するための第一歩と言えるのではないかと思います。

 

 

 

まとめ

販売・生産管理システムの基本的な機能とは
☑ 販売管理
☑ 生産管理
☑ 調達管理
☑ 在庫管理
☑ 原価管理
生産形態により販売・生産管理システムはどう変わるのか
☑ 受注生産と見込生産
☑ 注文品と規格品
☑ 生産ライン
販売・生産管理パッケージシステム検討時の注意点
①自社の生産形態に合ったシステムを選ぶ
②ユーザー帳票作成機能やデータ出力機能を活用する
③パッケージの標準機能に合わせる

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