RPAに対する関心が高まっています。
RPAを取り扱うベンダーは30社を優に超え、IT雑誌等で頻繁に特集されています。
しかしながら、RPAに対する利用者側の知識はまだ浅く、RPAの適用条件や対応可能な業務・作業等、未知数なところがあります。
今回は、RPAの適用条件を解説し、RPAの活用事例をいくつか紹介します。
RPAの適用条件
RPAは、ロボティック・プロセス・オートメーションの略で、ITを利用した作業の自動化のことです。
RPAは、AI(人工知能)と混同・誤解されることもあるようですが、AIとは明確に異なります。AIは、ヒトが行うような判断も自動化の対象となりますが、RPAは判断を伴う作業や業務には適していません。この点が大きな違いです。
【RPAの適用条件】
☑判断を要さない業務
☑音声認識を介さない業務
☑紙媒体を取り扱わない業務
☑作業量が膨大な業務
RPA自体は、紙媒体を取り扱うことはできませんが、OCR等を利用することにより、データ入力を自動化することもできます。また、音声ソフトとの併用により、音声を電子データ等に自動記録することができるRPAもあります。
【RPAが対応可能な作業】
①情報取得・入力
②検証・突合作業
③レポート作成
④異なるシステムへのログイン(システム間インターフェース等)
RPAが効果を発揮するのは、繰り返し同じ作業を行うケースです。
ヒトが繰り返し同じ作業をする等、ロボットに代行させることができる作業が対象です。
例えば、以下のような業務が対象となります。
■RPAが対応可能な業務例
経理・財務
現預金残高照合、交通費精算の整合性チェック、売上入力・売掛金の消込処理
営業
商品・製品マスタの入力、受注情報のシステム入力、請求書の作成
人事
採用・退職者情報の入力、勤怠情報のチェック、人事評価の集計・レポート作成
その他の業務
為替レートの取得・システム入力、データ収集状況の確認、定型的な報告書の作成・展開
RPAは、ルール(一定の法則)に基づいて繰り返す業務に適しています。
言い換えれば、ルール化できない業務は、RPAに不向きです。
イレギュラーまたは突発的なケースはヒトが対応する必要があります。
まずは、この点を正しく理解する必要があります。
RPAの活用事例~交通費精算業務~
それでは、RPAの活用事例として、交通費精算業務を考えてみます。
交通費精算が①データ入力②確認および承認③経理による支払からなるとします。
①データ入力
タクシー等の領収書から交通費の精算を行う場合、従来であればヒトが領収書を確認し、金額や科目等を手入力します。領収書が複数枚になれば、ヒトは同じ作業を繰り返します。
このヒトが行う繰り返し作業をRPAは自動化します。
Point:紙資料をOCR等でデータ化して、RPAによる自動入力を実現します。
②確認および承認
ヒトが入力したデータは、ヒトが確認・承認しなければなりません。
この作業もヒトによって繰り返し行われます。
RPAは、このヒトが繰り返し行うチェック作業を自動化します。
Point:RPAに運賃を検索させ、入力データと突合させることができます。
③経理による支払
承認された交通費データは、会計伝票に起票され、経理承認を経て支払われます。
繰り返し、会計伝票が起票され、支払処理が行われることになります。
この繰り返し行われる起票から銀行データの作成までをRPAが自動化します。
Point:RPAにより、既存システムを変更することなく自動連携が可能です。
RPAの活用事例~売掛金管理業務~
次に、RPAの活用事例として、売掛金管理業務を考えます。
売掛金管理業務が①データ入力②請求書の作成③経理による入金・消込からなるとします。
①データ入力
顧客の申込情報を販売システムに登録する場合には、店舗等で記入された申込書を確認し、申込情報を一件ずつ手入力します。申込書が複数枚になれば、ヒトは同じ作業を繰り返します。
このヒトが行う繰り返し作業をRPAは自動化します。
Point:店舗等における申込情報は、RPAが自動的に入力することが可能です。
②請求書の作成
販売システムの明細情報を合計して、月次請求書を作成するとします。
明細データを集計し、請求書を作成する作業は、ヒトによって繰り返し行われることがあります。
RPAは、このヒトが繰り返し行う作成作業を自動化します。
Point:請求書を自動生成・PDF化し、メールで自動送信することができます。
③経理による入金・消込
顧客からの入金を受けて、経理は入金処理と売掛金の消込処理を行います。
この入金から消込までの作業は、顧客あるいは入金単位ごとに一件ずつ繰り返し行われます。
この繰り返し行われる入金から消込までの作業をRPAが自動化します。
Point:売掛金の入金と消込は、RPAによって自動化させることが可能です。
RPAの活用事例~連結決算・開示業務~
最後に、RPAの活用事例として、連結決算・開示業務を紹介します。
この業務が①個別財務情報の入力②連結財務諸表の作成③開示資料の作成からなるとします。
①個別財務情報の入力
連結決算に必要な個別財務情報は、各社の会計システムから該当データを参照し、連結パッケージというExcelツールに転記されることが多く、ヒトは同じ作業を繰り返し行います。
このヒトが繰り返し行う転記作業をRPAは自動化します。
Point:連結決算に必要となる個別財務情報は、RPAによる自動入力で収集可能です。
②連結財務諸表の作成
連結パッケージは、各社から電子メールにより収集し、それぞれ連結システムに入力します。
Excelをインポートできないようなケースでは、ヒトが一社ずつ転記入力しなければならず、RPAは、このヒトが繰り返し行う転記作業を自動化します。
Point:RPAでは、Excelのデータをシステムに自動登録することが可能となります。
③開示資料の作成
開示資料を作成する際、連結システムから該当データを参照して開示システムへ転記、あるいは決算短信やアニュアルレポート、有価証券報告書のExcelデータを作成することがあります。
RPAは、このヒトが繰り返し行う転記ないしレポート作成作業を自動化します。
Point:開示資料の作成は、財務数値の転記することが多く、RPAが代行可能です。
RPAは、まだまだこれからの製品です。
現在は多くの企業で関心が持たれ、パイロット導入を行う企業も増えつつありますが、RPAが適用できる領域は、まだ検討段階にあり、その効果は未知数です。
RPAの意義や機能を理解せずに、“自動化”や“自動操作”という言葉に惑わされると、今使っているERPの製品で対応できるような作業をRPAで対応しようとしたり、単純にExcelで済むような作業をRPAに置き換えようとしたり、無駄を生じかねません。
慌てて“RPAブーム”に乗って導入するのではなく、RPAとは何か?RPA製品の本来の機能、その効果を慎重に分析する時間が必要です。
RPAのトライアル導入や部分導入で“お試し期間”を設けた方が安全です。
RPAベンダーの中には、一定期間無料で使用できるようなオプションを用意していたり、パソコンのデスクトップを監視して、ルーチン作業を割り出し、RPAで自動化できる作業エリアを解析するツールを持っていたりします。
一度、冷静になって、トライアル導入やデスクトップ分析から始めてみてはどうでしょうか?
まとめ
RPAの適用条件
【RPAの適用条件】 | 【RPAが対応可能な作業】 |
判断を要さない業務 音声認識を介さない業務 紙媒体を取り扱わない業務 作業量が膨大な業務 |
①情報取得・入力 ②検証・突合作業 ③レポート作成 ④異なるシステムへのログイン |
★RPAは、ルール(一定の法則)に基づいて、繰り返し行う業務に適している。
RPAの活用事例
~交通費精算業務~
Point:OCRデータを利用したRPAによる自動入力
Point:Webデータと入力データの検証・突合
Point:既存システムとのデータ自動連携
~売掛金管理業務~
Point:店舗等における申込書情報の自動入力
Point:請求書のPDF自動化および自動メール送信
Point:自動入金および自動消込処理の実行
~連結決算・開示業務~
Point:連結基礎情報(個別FS等)の自動入力
Point:連結パッケージ(Excelデータ)の自動取込
Point:財務数値の転記作業における自動化
RPAはこれからの製品であり、RPAが適用できる業務領域は、まだ未知数である。
★RPAは、トライアル導入やデスクトップ分析により、慎重に検討を進めるべきである。