弊社若手コンサルタントには、常に新しいことに挑戦する機会があります。
新人コンサルブログ第3回、3人目のエントリーになる今回は、お客様先のプロジェクトに入って感じた「見える化」の重要性についてお話します。
システムリプレイスにおける「見える化」
今回は、基幹システムリプレイスにおける「見える化」についてご紹介します。
このプロジェクトでの主な作業は、業務フローの作成やシステムの使用方法を記載した運用手順書の作成でした。また、システムをお客様先に入れて問題がないかを検証するためのユーザーへの受け入れテストや、総合テストのシナリオ等のドキュメント作成にも携わりました。
どのドキュメントにも共通して言えるのは、お客様に新しいシステムで状況がどのように変化するかを分かりやすく理解してもらい、システムをスムーズに使って頂くことを目的に作成したものである、ということです。
この案件のお客様先では、国内・海外に複数のグループ会社を抱えており、システムにも多くの方が関わっていました。非常に多くのユーザーに、システム導入による業務の変化を理解して頂く必要があります。
そこで必要になるのが「見える化」のためのドキュメントです。
なぜ「見える化」が必要だったのか
「見える化」の必要性に気づかせてくれたのは、お客様からの次のような意見でした。
「上席がシステムを替えると決めたけれども、本当のことを言うと、現場としてはシステムを替えることで何が変わるのか、自分たちになんのメリットがあるのかわかんないですよね。システム屋さんは専門用語をたくさん使うけれども、知らないことばかりで実感がわかないですし、何をこちらから提案すればいいのかもわかんないんです。」
確かに、システムを入れ替えることによって何が変わるのか、今の業務を新しいシステムに置き換えるとどうなるのかというのは、お客様にとってあまりイメージしやすいことではありません。専門性のあるシステムの仕組みや機能の説明をそのまま伝えても、お客様には馴染みがなく、簡単には理解して頂くことが出来ません。お客様に分かりやすく理解してもらい、一緒にお客様が目指す業務の形を作っていくために工夫が必要です。
その際の問題解決の手法の1つとして利用したのが、「業務フロー」です。
「業務フロー」とは、新しいシステムを導入した際に、お客様の業務がどのような流れで行われるかを視覚的に表した図のことです。まさに、「見える化」のための資料です。
「業務フロー」では、誰がいつどのタイミングで、どのようなシステム機能を使い何をするのかを一目で見ることが出来ます。
また、「業務フロー」で今ある姿(As-Is)と今後作りたい姿(To-Be)を作成することで、システム導入による業務の変化を視覚的に比較して理解してもらうことも出来ます。
実際に先ほどの意見を下さったお客様に「業務フロー」を作成しながら説明を行ったところ、
「最初は不安だったけど、これを見たら不安が払拭された。この図を見ながらであれば新しいシステムで出来ることの理解も、やりたいと思えるアイディアを伝えることも出来る。」
という意見を頂くことが出来ました。
「見える化」を意識した資料を用意することにより、お客様の理解を助ける事が出来ましたが、お客様が求めるシステム像を伝えやすくなることは、我々にとっても、お客様が納得するシステムを作れるようになるなどのメリットがありました。
「見える化」することにより、お客様にとっても、システムを作る側にとっても良い結果をもたらすことが出来ます。
「見える化」を実現するために注意したこと
「見える化」の資料を作る際には、以下の点に注意する必要があります。
①お客様との双方向のコミュニケーション
1つ目は、お客様と双方向のコミュニケーションをとることです。
これが、「見える化」の成否を決めると言っても過言ではないというくらい大切です。
特に「見える化」をする上では、ヒアリングと議論をしっかりと行うことが重要です。
現状の業務はどのようになっているのか、不満な箇所はないか等をヒアリング・議論を行い明らかにしていきます。
②「5W1H」を意識した体系的な整理
2つ目は、「5W1H」を意識した体系的な整理です。
仕事の流れは、仕事を行う主体・関係者、時期・タイミング、場所、理由、方法、業務内容等の様々な要素から構成されています。また、1つの仕事のみで完結せず、様々な仕事が関連しているケースがほとんどかと思われます。
それらがしっかりと整理できないと、ヒアリング・議論したことが実現できなくなってしまいます。
整理する際に意識したのが、「5W1H」です。時には表形式で業務毎の「5W1H」を纏めることも有用です。
③図示による視覚的理解
3つ目は、可能な限りビジュアル的に表現することです。
ただ情報を言葉で長々と話しても、聞き手の立場からするとイメージがしづらいかと思います。そこで、図示することが重要になります。
オブジェクトや記号・矢印・アイコンを使いシンプルな表現を心掛けると見やすくなります。
また、1つ1つの配置や色使い、大きさがバラバラだとお客様が見た時に理解しづらい資料になってしまいます。予め、客様と記載方法について認識を合わせた上で資料作成することもポイントです。
ex)システムはこの記号、この主体は○色、帳票がシステムから出力された場合は、○○のように記載する等
「見える化」がもたらした恩恵
「見える化」は、システム導入プロジェクトにおいて、お客様の業務とシステムの橋渡しのような役割を果たすことが出来ます。
「見える化」のための資料がお客様の理解を助け、お客様の求める理想像に近い業務イメージを作り出すことにつながります。お客様にとっても、開発を行う側にとってもより良い製品が作れるようになり、win-winの結果をもたらすことが出来ます。
お客様に満足してもらえるような良いシステムを作るため、「見える化」は非常に大切な考え方です。
普段の業務の中でも、意思の疎通や相手の理解を得ることが困難になることもあるかと思いますが、そんな時は「見える化」するという視点から手段を考えてみるのも有用ではないでしょうか。