最適なシステムを選ぶためにRFP(提案依頼書)が果たす役割は大きいです。
RFPの認知度も高まってきており、システム選定の際に作成するケースは増えてきているように感じます。
ただ、RFPについては、記載すべきことが何かで決められている訳ではなく、実際にRFPを見ても、書かれている内容はそれぞれ異なります。お客様から、「何を書けばよいのですか?」と聞かれることも多くあります。
ここでは、RFPに記載すべき内容について整理してみたいと思います。
RFPの目的・効果
RFPの記載内容に入る前に、まず、RFPの目的・効果について確認しておきたいと思います。
記載内容・記載方法によっても異なりますが、大きく分けて次の6つが効果として挙げられます。
☑システム要件の網羅
☑適合率の定量的な測定
☑システム構築仕様の明確化
☑提案比較の負荷軽減
☑正確性の高い見積り
☑選定過程及び結果の客観性
※詳しくは「なぜRFPを作成するのか?RFP作成の効果と留意点」をご覧ください。
https://www.aimc.co.jp/?p=209
RFPへの記載内容の例
上記の効果を得るために、RFPには次の内容を記載する必要があるのではないかと考えています。
①システム構築の背景・目標・現状
②新システム・ベンダーに求めるべきこと(要求事項)
③提案してもらうにあたってのルール(提案要項)
中心になるのは、『②新システム・ベンダーに求めること』です。
ここでは、新システムに求める機能(機能要件)やシステム導入における要件(導入体制や導入メンバー、導入スケジュール等)、保守・運用において必要となる事項などを示します。
また、少し観点は異なりますが、契約条件(契約形態、検収条件、支払条件等)などを示す場合もあります。
これらを示すことにより、要件を網羅したうえでベンダーに明示することができます。
そのようなRFPに基づき提案を受けることで、正確性の高い適合率の測定や見積もりの受領が可能となります。
『①システム構築の背景・目標・現状』は、要求事項を補完します。
システム構築に至った経緯や目的(改善したい課題)、システムの現状などを伝えることで、より自社に適した提案をベンダー側から受け取ることが期待できます。
ここで注意したいのは、RFP全体を通じて一貫性を持たせる、ということです。
例えば①にてパッケージの標準機能を最大限活用したい、という目標を掲げておきながら、②には現在のシステムにある機能はすべてそのまま実装すること、などと書いてしまうと、ベンダー側はどちらを重要視すればよいのか、判断がつかなくなってしまいます。
『③提案してもらうにあたってのルール』は、提案にあたっての事務連絡的な内容となります。
提案書への記載内容、記載順や提案スケジュール、回答用紙や質疑応答のルールなどを示します。
こちらの内容を明記することにより、各社からの提案を比較しやすくすることができます。また、選考過程や選考結果の客観性を高めることもできます。
RFPの記載内容に関するポイント
繰り返しにはなりますが『②新システム・ベンダーに求めること』がRFPの一番中心的な内容となります。
新しいシステムを導入・運用していくにあたり、必要なことを明示して伝える必要があります。ここの内容が曖昧だったり実態と異なっていると、システム導入が始まってから思わぬところでギャップが生じたり、要件定義後に費用が想像以上に膨らむことが分かったり、といった事態を招くことになります。
そのような結果を招かないためには、
・必要な要件を洗い出すこと
・要件の記述内容に曖昧さを残さないこと
が重要となります。
RFPに添付する資料
ここまでRFPへの記載事項について触れてきましたが、RFPには、別紙や添付資料を付けることも多くあります。
例えば、現行システムの機能、現行の業務フローなどを付けることがよくあります。
また、システム導入後に想定している業務フローをつけ、フローのように業務を実施することが可能かを問うこともあります。
それ以外にも、
・システム全体図(現状/システム導入後の想定)
・インターフェースに関する資料(現状/システム導入後の想定)
・EDIに関する資料(現状/システム導入後の想定)
・現システム画面サンプル
・帳票サンプル
・見積用のフォーム
・質問用のフォーム
などを付けることも多いです。
いずれも、自社のことをよりよく理解したうえで、提案してもらうことが目的となります。
ですが、一点気をつけたいのは、「だろう」という気持ちで添付資料を付けていないか、という点です。
例えば、現行の帳票サンプルを付ける場合ですが、サンプル帳票を付けておけばこの帳票を実装する前提で提案してくれる"だろう"では良くありません。
「似たような帳票があるからこれでいい」と考えるベンダーもあれば、「似たような帳票はあるが項目が足りないので追加開発だ」と考えるベンダーもいます。
このように異なる考えで作られた提案が並ぶと、比較は難しくなります。
提案を受けるにあたり解釈に違いが出てしまうような曖昧さは極力排除して、RFPを作成することが、より自社に適したシステムの選定につながります。
RFPを作成する際の留意点~曖昧さの排除とは~
RFPを作成するには曖昧さを排除することが大切だ、という点を繰り返し述べましたが、最後に少し補足させてください。
ここで言う曖昧さの排除とは、ベンダーごとに解釈が異なってしまわないように、曖昧な表現は極力避ける、という意味です。
曖昧さを避ける、というお話をすると、「RFP作成段階から細かな点(例:帳票レイアウト)まで決めなければ」と考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、RFPは、あくまでもベンダー・システムを選定するために作成するものです。
RFP=システムの設計書ではありません。
RFPは自社に最適なベンダー・システムを選定するためのものだという前提で記載内容を検討し、ベンダーが曖昧に理解しないような記述内容にする、というのが必要な点だと思います。
今回は、RFPへの記載事項について述べさせていただきました。
RFPを作成する際には、第三者から見て曖昧な表現が残っていないかという視点で、記載した内容を繰返し確認することをお勧めします。
今回の記事が、皆様のシステム選定の一助になれば幸いです。
まとめ
RFPへの記載内容
☑システム構築の背景・目標・現状
☑新システム・ベンダーに求めるべきこと(要求事項)
☑提案してもらうにあたってのルール(提案要項)
RFPの記載内容に関するポイント
☑必要な要件を洗い出すこと
☑要件の記述内容に曖昧さを残さないこと
曖昧さとは
☑細かな仕様には曖昧さが残ってもよい(設計書のような内容はシステム導入時に決めるべきこと)
☑ベンダーごとに解釈が異なるような曖昧な記述は避ける