海外対応の勘所!海外拠点増加時のJ-SOX対応事例

2017年02月02日

 

日本企業の海外進出は、年々加速しています。
特に中国や東南アジアへ進出は著しく、海外支社や海外子会社への監査対応が急務となっている企業様も多いのではないでしょうか。
異なる環境や文化の下での内部統制対応は、リスクに関する考え方の違いなど様々であるため、対応が難しく、弊社でもお問い合わせを受ける機会が増えています。

 

そこで今回は、過去に弊社で対応した海外拠点のJ-SOX対応について、課題やその解決策などの事例をご紹介いたします。

 


海外対応の特性・課題

事例をご紹介する前に、まずは海外対応の一般的な留意事項について確認したいと思います。海外拠点においては次のような特性があり、これらは内部統制対応にも大きく関わってきます。

 

不正を誘発するリスクが高い
・海外拠点では国内拠点と比較して、金銭などを見返りに、ライバル社から機密情報提供の働きかけがある
・仕入先からも賄賂の誘惑を受けるなど、不正のリスクが高い環境にある
ルールが明文化されていない
・日本では一般的な規程(職務分掌規程など)も、アジア諸国では会社のルールとして明示されていないことが多い
業務分掌が明確でない
・欧米諸国以外の海外では、職務権限が曖昧である
・内部牽制機能が存在していない場合が多く、架空取引・横領の不正が発生しやすい
承認の証跡(押印)がない
・承認行為はサインもしくはメールが一般的であり、判別しにくい
・海外での承認の証跡は、サインもしくはメールが一般的である。また、 申請についてルール化されていない
対面コミュニケーションが難しい
・物理的に距離が離れているため、タイムリーな情報連携が難しい
・コミュニケーションを取る上で、言語の問題も留意する必要がある

 

 

海外対応事例その1

海外対応における留意事項を踏まえ、どのように進めていくのか、実際の海外対応事例をご紹介します。

 

1つめは、IT統制の構築・評価の事例です。
こちらの企業様では、IPO(株式上場)に伴い、J-SOX対応が必要となり、IT統制の構築(手順書の整備など)および評価で支援をさせていただきました。
北米子会社(ロサンゼルス拠点)が、グループ売上の構成比率が高いため、評価対象となりました。

 

課題点
「現地監査法人の監査を受けているため、現行の業務内容に問題はない」という海外子会社側の見解があり、J-SOX対応による業務変更や追加作業に対して反発があった。

 

解決策
J-SOXの構築を進めるにあたり、海外拠点側に対し
①J-SOXの目的
②IT全般統制の重要性
③IT全般統制における評価ポイント
の説明を行った。

 

上場企業の義務として、J-SOX対応(日本の法制度対応)が必要という事を明確に伝えました。
J-SOXの目的、IT全般統制の重要性・評価要件、実施すべきタスク、優先順位などを説明会や指導を通じて現場担当者に理解させることで、反発の抑制にもつながり、協力を得られるようになりました。

 

 

海外対応事例その2

2つめは、内部統制評価の事例です。
買収した海外子会社(中国拠点・カナダ拠点)の売上が増加し、内部統制の評価範囲に入ってきたことから、全社統制および決算統制(全社)の評価を行いました。

 

課題点
海外子会社のJ-SOX対応をできるだけ最低限に留めたいという意向があった。
一方で、監査法人の監査に耐え得るものにする必要がある。

 

解決策
以下の評価項目を見直し、可能な限り削減することを検討した。
①親会社の統制が及ぶ評価項目
②他の項目の評価結果に依拠できる評価項目
③組織体制など、会社の規模に応じ、評価項目を検討

 

親会社の統制でカバーできるものは、子会社側で個別に評価する必要はありません。
可能な限り親会社側でグループ全体の統制をかける仕組みを作ることで、海外子会社側での評価作業の負荷を下げることに成功しました。
その際、評価項目については監査法人と交渉し、合意を得ておく必要があります。

 

 

海外対応における課題解決ポイント

上記事例で挙げた課題以外で、海外対応を進める中で発生している課題と、その解決ポイントをご紹介します。

 

内部統制構築における留意事項
☑不正の機会を減らす仕組みを作る
職務分離や上長のチェック、ジョブローテーションなど、不正の機会を減らす仕組みを設けることで、コンプライアンス上の問題を防ぐ。

☑海外子会社に対して、親会社で統制活動を行う
親会社が海外子会社の管理・監督を行い監視機能を強化することで、海外子会社の評価チェックリストにおける評価項目が減り、J-SOX評価の効率化にもつながる。

 

内部統制評価における留意事項
☑海外拠点との認識合わせ
証憑を海外拠点へ依頼しても、意図した証憑が届かないケースが多い。
評価項目の内容を説明した上で、証憑収集の目的、評価に必要となる証憑の内容や期限について予め認識合わせを行うことが解決につながる。

☑決算期のズレに伴うスケジュール管理
国内では企業の決算期は3月が多いのに対し、海外では12月決算となっているケースが多い。
会計処理期間のズレが生じるため、国内拠点の評価対応スケジュール・繁忙期などを考慮しつつ、ヒアリングや証憑収集など、スケジュールを調整しておく。

 

海外拠点の特性を予め認識しておくことで、起こり得る問題を予見することは重要です。
これから海外対応を進める際、まずは現地担当者の理解・協力を得ることから進めてみてはいかがでしょうか。

 

 

まとめ

海外対応の特性
・不正を誘発するリスクが高い
・ルールが明文化されていない
・業務分掌が明確でない
・承認の証跡(押印)がない
・対面コミュニケーションが難しい

 

実際の海外対応事例
☑IT統制構築の事例
J-SOX対応による業務変更や追加作業に対して海外拠点側の反発があった。
↓解決策
①J-SOXの目的
②IT全般統制の重要性
③IT全般統制における評価ポイント
の説明を行い、海外拠点側の理解を得た。

 

☑内部統制評価の事例
海外子会社のJ-SOX対応を最低限に留めたいと言う意向があった。
↓解決策
可能な限り親会社側でグループ全体の統制をかける仕組みを作ることで、
海外子会社の評価工数を削減。
※評価項目については監査法人と交渉し、合意を得ておく必要がある。

 

課題解決のための留意事項
内部統制構築の留意事項
・不正の機会を減らす仕組みを作る
・海外子会社に対して、親会社で統制活動を行う

内部統制評価の留意事項
・海外拠点との認識合わせ
・決算期のズレに伴うスケジュール管理

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