海外監査の準備!~海外拠点における往査計画のポイント~

2018年01月11日

 

日本拠点の監査と同様、海外監査においても、往査は業務監査の中心的な役割を果たします。
往査とは、監査対象に出向き、実際の状況を確認する作業を指します。海外拠点における監査の場合、物理的な距離が離れているため、往査日程も限られてきます。
そのため、往査を行うための事前準備が重要となります。

 

一口に海外といっても、国や業務状況等も拠点によって異なり、往査計画を検討する上で考慮すべきことは多くあります。
効率的かつ、監査の実効性を高めるためにも、事前に情報を収集した上で往査計画を策定する必要があります。

 

今回は、海外監査の往査を進める上で、どのような点に留意し、準備を進めていくのかについて触れていきます。

 


海外監査の基礎的考慮事項

海外拠点の内部監査を行う際には、国内拠点の監査を行う場合と比べ、国や地域による言語、地理(物理的距離)、政治、文化、宗教、商習慣等の違いに注意する必要があり、海外拠点の状況を把握する上での基礎的な情報となります。
また、一見内部監査に関係が無そうな情報にも見えますが、往査計画を検討する上で、大きな影響を与えます。
海外監査の基礎的考慮事項として、以下があります。

 

・言語
海外拠点担当者へのインタビューを行う上で、大きく影響します。
母国語が英語以外でも、職場では英語を共通言語として使用しているケースもあります。
また、必要に応じ、通訳の手配も検討する必要があります。

 

・地理
日本からの移動時間により、往査日程に影響を与えます。
アジア等、近隣地域では数時間程度での移動が可能ですが、地域によっては移動だけで1日を見込んでおく必要があります。

 

・政治情勢
テロや紛争等、危険を伴う地域については、往査による監査は難しいと考えられます。
政治情勢を加味しながら、往査対象とする海外拠点を選定することになります。

 

・商習慣
例えば、アジアにおいては、契約書の内容に則ってビジネスが行われないケースもあります。その場合、往査において新規取引先との手続を確認するとともに、契約書に代わる合意文書の有無を実査する必要があります。
そのため、海外拠点の監査において、日本拠点で用意している資料や証憑と異なってくる可能性があります。

 

・災害
日本拠点の場合、地震による災害リスクの重要性が高くなりますが、地域によってリスクが変わってきます。
(例)アメリカ:台風、アジア:洪水
また、災害が発生しやすい時期を避けて、往査日程を計画する必要もあります。

 

上記のような基礎的事項を踏まえ、往査対象とする拠点や時期を検討します。

 

 

往査日程の調整

次に、往査の具体的な日程を決めることが必要になります。
海外監査においては、実効性とともに効率性(予算や時間等の配分)がより強く求められます。
そのため、十分な時間を取り、現地担当者とも連携しながら、往査日程を調整することをお勧めします。

 

往査日程を調整する上で、検討すべき事項を見ていきたいと思います。
以下は、検討事項の例になります。

 

・国特有の休暇、宗教(ラマダン等)
中国の旧正月等、国特有の休日を避けて、往査時期を調整する必要があります。

 

・業務の繁閑
対象となる海外拠点における業務の繁忙期を避け、往査時期を設定する方が望ましいです。
繁忙期に行おうとすると、インタビューや資料の収集等がスムーズに進められないリスクもあります。
また、事前に予定を組んでいたとしても、変更を余儀なくされることもあります。

 

・担当者の把握
誰がどの業務を担当しているかは、事前に把握しておく必要があります。
担当業務により、インタビュー対象者も変わってくることになります。

 

例えば、システムによる処理内容を確認しようとした場合、システムに関する内容なのでIT部門の予定を押さえていたところ、IT部門はインフラ部分しか管理しておらず、実際の処理内容はユーザ部門に確認しないと分からないという場合もあります。
そういったケースを避けるため、各業務の担当者は事前に把握しておくべきです。

 

・移動時間
訪問先の場所、移動時間も考慮する必要があります。
国によっては、交通インフラが整備されておらず、空港から対象拠点、滞在先から対象拠点への移動に時間を要する場合もあります。
限られた時間での往査になるため、移動時間も重要となります。

 

・他の監査との調整
監査法人や監査役等による往査日程も把握し、調整する必要があります。
業務監査のテーマやボリューム等を考慮し、日程を合わせるのか、監査法人や監査役等による往査日程と合わせて対応するのか、別日程で対応するのか等、判断する必要があります。

 

その他、メールやweb会議等を通じ、現地担当者とコミュニケーションを取ることも重要になります。
監査の目的や進め方等を事前に共有しておくことにより、海外拠点側の監査への抵抗感を減らし、スムーズに往査を進めることもできます。

 

海外拠点の担当者と連携しながら、事前に状況を把握し、綿密に往査日程を調整する必要があります。

 

 

 

往査に向けた事前準備(関連資料の確認)

往査の実施前に、監査対象拠点の概況を把握しておく必要があります。
規程類や手順書、体制図等、事前に取得できる資料については、対象拠点に依頼しておくことをお勧めします。
できるだけ往査前に資料を収集しておくことにより、効率的に往査を進めることができます。
事前確認しておくべき資料として、以下のようなものがあります。

 

・規程類
海外拠点におけるルールを事前に把握し、往査時にその運用状況を確認します。
また、海外拠点においては、そもそも規程類等、ルールが存在しないケースもあります。
その場合、往査時は、代替となる文書の有無、文書整備の指導を行うことが中心となります。

 

・体制図
限られた時間の中で、全ての担当者にインタビューを行うことは難しいと思います。
そのため、各部門のリーダー等、管理責任者を把握し、誰に何をヒアリングするべきか、
事前に検討しておく必要があります。

 

・事業概況
扱っている商品・サービス、その商流、財務状況(売上成長率等)の概要は把握していく必要があります。
まずは、主要な商品やサービスに関わる管理状況を監査することになります。

 

・主要取引先
グループ取引が中心なのか、外部取引が中心なのかで、監査の視点・チェック内容も変わってきます。

 

事前に資料を確認しておくことにより、往査実施の際の確認ポイントを明確にしておくことができます。

 

また、現地担当者に対して監査内容を説明するため、現地担当者が理解できる言語で翻訳した監査チェックリストを用意できれば効果的です。
事前に監査チェックリストを展開し、現地担当者から監査項目に対する回答を得ておくことで、効率的に往査を進めることができます。

 

事前に確認できる内容は、往査前に確認し、ポイントを押さえた形で往査を行うことが望ましいと考えます。

 

 

海外拠点における往査計画を検討する際は、各拠点における国や地域による言語、地理(物理的距離)、政治、文化、宗教、商習慣等や規程類・体制といった基礎情報を収集することが重要です。
その上で、現地担当者と綿密にコミュニケーションを取りながら、往査計画を確定させることをお勧めします。

 

 

 

まとめ

海外監査の基礎的考慮事項
☑国や地域による言語、地理(物理的距離)、政治、文化、宗教、商習慣等の違いに留意する。
☑海外監査における基礎的事項を踏まえ、往査対象とする拠点や時期を検討する。

 

往査時期の調整
☑実効性とともに効率性(予算や時間等の配分)がより強く求められるため、十分な時間を取って計画する。
☑海外拠点の担当者と連携しながら、事前に状況を把握し、綿密に往査日程を調整する必要がある。

 

往査の事前準備
☑規程類や手順書、体制図等、事前に取得できる資料については、収集・確認をしておく。
☑事前に確認できる内容は、往査前に確認し、ポイントを押さえた形で往査を行うことが望ましい。

 

海外監査における予備調査や監査計画策定の留意点について、以下にアップしております。
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